
チーズの本場・フランスでもっとも愛され、世界中の人々を魅了するチーズ「コンテ8ヶ月以上熟成」
2025/05/08
健康志向の高まりにともなって、日本でもチーズの需要が伸びているとか。実際、周りを見回せば「チーズが好き」という人が少なくありません。今回、編集長アッキーこと坂口明子が気になったのは、「コンテ8ヶ月以上熟成」。コンテはチーズ好きの間で大人気ですが、その中でもおいしいと評判の高いこちらのチーズを販売している、株式会社フェルミエ 代表取締役社長の西村千鶴氏に、取材陣がお話を伺いました。

株式会社フェルミエ 代表取締役社長 西村千鶴氏
ー御社は、日本初の輸入ナチュラルチーズ専門店とうかがいました。創業の経緯についてお聞かせください。
西村 1986年、それまでチーズ輸入会社で働いていた本間るみ子が独立し、株式会社フェルミエを創業しました。フェルミエとは、フランス語で「手作り」や「農家製」を意味する言葉です。酪農からチーズの製造までを行う、今では少なくなってきた生産形式で、本間は「手作りし続けてきた農家」の思いを大切にするため、この言葉を社名にしました。
本間は、日本ではナチュラルチーズがあまり知られていなかった頃から、フランスやイタリアを始めヨーロッパ各国の作り手を訪ね、その土地ならでは、その作り手ならではのチーズを発掘し、輸入してナチュラルチーズの普及に奔走しました。

1986年、日本初の輸入チーズ専門店として東京・渋谷にて創業。
以来、農家製のチーズにこだわり、200種類以上のヨーロッパチーズを空輸、販売している。
店舗は、1997年に現在の愛宕(港区)に移転。
ーナチュラルチーズとは、どういうチーズのことを指すのですか?
西村 日本では、チーズをおもに「ナチュラルチーズ」と「プロセスチーズ」の2種類に分類していますが、ヨーロッパでは、チーズといえばおもにナチュラルチーズのことをいいます。国際食品規格によれば、ナチュラルチーズは「乳や脱脂乳をレンネット(凝乳酵素)などの凝固剤で固め、ホエイ(乳清)を分離したもの」と定義されています。つまり、ナチュラルチーズは新鮮な乳を加工したもの。一方、プロセルチーズはナチュラルチーズを加熱して溶かし、形成したものです。
創業した頃、プロセスチーズは日本に普及していましたが、ナチュラルチーズはまだまだ高嶺の花的な存在。弊社も、最初はレストランへの卸しが中心でした。ちょうどバブル期にさしかかり、レストラン業界でもシェフの方々がヨーロッパの食文化、とくにフランス料理を日本に紹介しようとされて、弊社のチーズをいろいろと買っていただきました。
また、一般の方々もヨーロッパを訪れる機会が増え、現地で初めてナチュラルチーズを味わってそのおいしさを知り、帰国後、ナチュラルチーズを求めになる方が増えていったようです。

ナチュラルチーズの分類。
ー本間さんは、まさにナチュラルチーズ専門店のフロンティアですね。その本間さんから、どのような経緯で社長のバトンを受け継がれたのでしょう。
西村 大学卒業後はリクルートコスモスに入社しました。その後先輩達が立ち上げた人材関連会社インテリジェンスに転職。8年ほど子会社の社長をやらせて頂いておりました。インテリジェンスの株式上場をきっかけに、今度は子供のころからあこがれていた国際的な人道支援活動を行っているNGO国境なき医師団へ。アジア、アフリカ、中東地域などに派遣され、人事、財務、物流など医療以外のサポートに従事しました。その後、楽天のグローバル人事で海外赴任の経験を経て、インテリジェンス時代の上司であり先輩の島田亨氏に、本間の後を継いでフェルミエの社長にならないか、と声をかけていただき現在に至ります。
ーということは、ずっと、チーズとは全く違う世界で活躍されていたのですね。社長になられて、ご苦労があったのでは?
西村 はい。フランスで3年間暮らしたことがあって、日常会話レベルのフランス語はできましたし、英語も話せるから大丈夫だろうとお受けしたのですが、チーズの専門知識はほとんどゼロ。チーズの名前に始まって、それぞれどういうふうにできているのかなど、社員の方たちに教えていただく毎日でした。
フランスには、村ごとに必ず自分たちのチーズがあるので、チーズの名前がいっぱいあります。イタリア、スイスもヨーロッパにはものすごい種類のチーズがあり、それぞれどんな種類のチーズなのか覚えるのにはとても時間がかかりました。未だに知らないチーズもたくさんあります。それら全てを覚えるのは無理ですが、自分が販売しているチーズは把握しておかなければいけません。
とくに私の場合、どのチーズは誰が作ったのかをちゃんと覚えたかったので、作り手さんのことが知りたかった。なので、10年かけてフランスを始め各地の作り手さんを訪ねて、彼らがどういう思いでどういう工程でチーズを作っているのかということを、聞き続けました。それによって自ずと興味が湧いてくるので、それで覚えていったのです。
ー数あるナチュラルチーズの中から、今回ご紹介させていただくのは「コンテ8ヶ月以上熟成」です。コンテとは、どんなチーズなのでしょう。
西村 タイプで言いますと、コンテはハード・セミハードタイプです。スイスとの国境にまたがるジュラ山脈一帯で作られる、1000年以上の歴史を持つチーズ。日本では、召し上がったことのない方も少なくないかもしれませんが、コンテはフランスの国民的なチーズであり、世界中で人気の高い品種です。
1つのコンテを作るのに、約500リットルのミルクが必要で、製造後は数ヶ月〜1年半ほど熟成させます。冬は雪に閉ざされるジュラ地方の人々にとって、プロテインやカルシウムなどがたっぷり含まれたコンテは格好の保存食なんです。出荷する際には厳しい審査があり、合格すればコンテ協会のテープが巻かれ、「コンテ・エクストラ」を名乗ることができるのです。

厳しい審査を経て、コンテ協会のテープを巻かれたチーズのみが「コンテ・エクストラ」。

食べる30分ほど前に冷蔵庫から出して室温に戻し、食べる直前にカット。
硬質で重量感があるが、口当たりはまろやか。
ーコンテチーズを作っている約140の工房の中から、御社はマルセル・プティット社製のものを取り扱っているとか。その理由は?
西村 コンテを作るにはまず、酪農家が牛を育ててミルクを搾ります。それを、フリュイティエールと呼ばれるチーズ工房がチーズにし、さらにアフィヌールと呼ばれる熟成士によって熟成され出荷されるのですが、熟成士によって発酵の仕方はさまざま。それによって味わいも香りも違ってきます。日本酒が、同じ米を原料としながらも蔵によって味わいや香りが異なるのと、同じです。
マルセル・プティット社は熟成専門会社。涼しい洞窟の中で、時間をかけてチーズを育て上げる熟成管理技術で知られています。優しくエレガントで上品な味わいが、マルセル・プティット社製コンテの特徴で、フランス国内だけでなく世界中の名だたるチーズ商たちがこぞって買い付けます。
熟成度が高く、味も強いパンチの効いた味わいのコンテもありますが、弊社では日本の皆さんには、より優しい味わいのコンテがお口に合うのではないかと考え、マルセル・プティット社製のものを扱っています。

標高1,100mのところに建つ要塞を利用したマルセル・プティット社のカーヴ。1年中温度・湿度が安定している。

マルセル・プティット社のチーズ熟成士が、コンテ1枚1枚にあった方法で手入れをしながら、
そのポテンシャルを引き出すためにゆっくりと熟成。
ーこちらのチーズの、おすすめのいただき方を教えてください。
西村 まずはそのまま召し上がって、深みがありながら優しい味わいと、クリーミーな口当たりをお楽しみください。そして、この「コンテ8ヶ月以上熟成」はさまざまな料理に使える万能チーズでして、おろしてパスタやグラタン、オムレツやキッシュなどを作る際に加えると、風味がいっそう引き立ちます。サラダに入れてもおいしいです。また、薄くスライスしてハムや野菜と一緒にパンに挟めば、贅沢な味わいのサンドイッチに。
封を開けてから日が経って、乾いて固くなってしまったら、シュー生地の中に入れてオープンで焼くと、ワインのおつまみとして最高においしいですし、お子さんにとっても栄養価のとても高いお菓子になると思います。

キッシュにコンテを加えれば、より豊かな味わいに。

コンテとくるみのかぼちゃスープ。コンテの味わいは、かぼちゃとの相性バッチリ。
ーワインとの相性は?
西村 もちろん、相性抜群です。とくに、軽めの赤ワインや白ワインと合わせると、チーズの風味とワインの持つアロマが調和して、素晴らしいマリアージュが楽しめます。
ーでは最後に、今後の展望についてお聞かせください。
西村 まずは、日本の方たちにチーズをもっともっと身近に感じていただけるよう、これからもナチュラルチーズの普及に努めてまいりたいと思っています。
バブル期を経験された年代の方たちにとっては、チーズ=ザ・フレンチという感じで、チーズはちょっと肩肘張って食べるものというイメージが強いかもしれません。でも、フランスでは、チーズは日常の食卓にはなくてはならないもの。コンテにしても子どもたちがおやつとして食べていたりします。
チーズは、成長や健康維持に欠かせない栄養がたっぷり含まれていますし、自然の旨みたっぷりなので、お子さんたちにこそ、ぜひ「本物のチーズ」を召し上がっていただきたい。そのお役に立つべく、弊社ではこれからも本当においしいナチュラルチーズを求めて各地を回り続けます。
幼い頃、おいしいチーズと出合った方が大人になって、ほかにもいろいろなおいしい食べ物と出合うなか、弊社のチーズに戻ってきていただけたら。私としては、自分の孫のような世代の方たちが弊社のチーズを召し上がって、「ナチュラルチーズって、おいしいよね」と言ってくださる……という日が来ることが一番の願いです。
ーチーズを、日々の食卓のメンバーに加えようと思います。貴重なお話を、ありがとうございました。

「コンテ8ヶ月以上熟成」
価格:100gあたり ¥793(税込)
店名:フェルミエ
電話:03-5776-7722(9:00~16:30 月~金 ※祝日除く)
定休日:土曜日・日曜日・祝日・年末年始及び夏季休業日 ※場合によって日・祝営業あり
商品URL:https://shop.fermier.co.jp/view/item/000000000002
オンラインショップ:https://shop.fermier.co.jp/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
西村千鶴(株式会社フェルミエ 代表取締役社長)
1965年香川県生まれ。リクルートコスモスからインテリジェンスに転職後、子会社社長を経験。国境なき医師団でNGO活動を行い、フランスでの経験を経て日本支部で人事責任者を務める。2012年楽天に転職。2015年に株式会社フェルミエの社長に就任。現在は、フランスを中心にチーズの生産者との交流を通して、豊かなチーズ文化を日本の食文化に少しでも浸透させ、融合できる方法を模索中。
<文/鈴木裕子 MC/藤井ちあき 画像協力/フェルミエ>