新潟・村上 地元の米・水・人にこだわった酒造り。地元限定や山廃純米、料理と引き立て合う「大洋盛」

新潟・村上 地元の米・水・人にこだわった酒造り。地元限定や山廃純米、料理と引き立て合う「大洋盛」

2022/06/28

全国各地の個性ある酒蔵のなかで、今回編集長アッキーこと坂口明子が気になったのは、新潟県の城下町村上で地元の米と水を使い酒造りを行う大洋酒造。14の古い酒蔵が合併して誕生したこちらの造り酒屋が、大切にしていることとは?大洋酒造株式会社の代表取締役社長、中山芳則氏にお話を伺いました。

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大洋酒造株式会社 代表取締役社長の中山芳則氏

―歴史のある酒蔵が合併して創業されたそうですね。

中山 終戦間近の1945年5月に、国家総動員法企業整備令により、地元の14の酒蔵が合併して始まったんです。発足時は下越銘醸株式会社、銘柄は「越の魂(たま)」でしたが、5年後に大洋酒造株式会社、銘柄は「大洋盛」に改めました。集まった酒蔵はいずれも古く、なかには1635年に創業した蔵もあります。地元の造り酒屋としてひたすらおいしい酒を造ってきた細い流れも、合流することで大河となり、洋々として大海に向かうことができる、そして揺るぎない企業として盛運を勝ち取ることができる、社名や代表銘柄にはそんな願いが込められています。

―新潟は酒造りの地。村上市もその1つですね。

中山 村上は城下町で、史蹟や文化財、地区ごとのお祭りなど歴史と文化のある町です。県の最北端に位置し、冬は寒くて雪もよく降ります。雪が空気を浄化してくれますから、私たちはクリーンルームの中で酒を造っているようなものです。酒造りは10月から3月末までの寒い時期だけ行っています。

―原料には地元産のお米を使われているとか。

中山 商品に用いる米はすべて新潟県産のみ。地産地消というのか、せっかく造るのなら地元で作られる米でという思いに加えて、うちの酒は地元で多く消費されるものですから、地元の生産者さんたちが作ったお米でお酒を造り、生産者さんをはじめとした地元の方の定番酒となってほしいですし、さらに、海外も含めた多くの方々にも飲んでいただきたいと考えます。

厳しい寒さの中でおいしい酒が作られる。
日本海に面した村上市。厳しい寒さの中でおいしい酒が作られる。
社員、蔵人が酒米「越淡麗」を育てている。
社員、蔵人が酒米「越淡麗」を育てている。

―種類豊富な「大洋盛」、名産の鮭に合うお酒も作られているのですね。

中山 村上藩の財政を支えたのは鮭だと言われるほど、村上は平安の昔から鮭とともに歩んできました。生まれ育った川に帰ってくる回帰性に早くから注目して環境が整えられ、人工孵化発祥の地ともされています。地元では鮭の塩引きや焼き漬け、粕漬けなど鮭の料理が100種類以上あるといわれ、鮭料理に合う日本酒をテーマに開発し誕生した酒が「山廃特別純米 サケ×サケ 大洋盛」です。乳酸を添加するのではなく乳酸菌を添加し酒母を立てます。原料からの乳酸発生を促しながら酒母を造る“山卸廃止酛”の純米酒で、旨味成分が多く味わい豊かな酒です。おすすめは常温からぬる燗。郷土料理で発酵食品の鮭の酒びたしとも相性がいいんです。

―ラベルもインパクトがあります。

中山 塩をすり込み流水に浸して塩を抜き、鮭を吊るして干し発酵をさせる塩引鮭は、村上では尾から吊り下げるので、下を向いた頭の部分を描いてラベルにしました。“ジャケ買い”ではないですが、いかに手にとってもらうかを考え、目に留まるものにしました。村上では鮭をとても大切にしていて、普段は捨てられてしまう部分も無駄にせず料理に使いますし、武士の文化がありますので、鮭の切腹を避けて、腹の一部を残す風習もあります。飲みながら村上のことも知っていただければうれしいですね。

塩引鮭の鮭の頭をイメージしてデザインされた「山廃特別純米 サケ×サケ 大洋盛」のラベル。
塩引鮭の鮭の頭をイメージしてデザインされた「山廃特別純米 サケ×サケ 大洋盛」のラベル。

―「大洋盛」の中でも、地元でしか買えないお酒が特に話題です。

中山 地元の方に質の高い酒を、毎日飲めるような手ごろな価格で提供したいという思いから、1993年に発売した「紫雲 大洋盛」です。これは、地元の特約店30店でのみ販売しています。いくらおいしい酒を造っても、売り手がいなければ先には進めないという考えから、共存共栄の思いを込めて、特約店での限定販売にしたんです。私たちも製造しておりますが、購入する場合は特約店からとなります。この酒は当蔵の合併創業50周年を記念して造ったもので、当初継続する予定はなかったのですが、地元や販売店の方々に品質を認められ、地元酒販店の販売促進にも貢献する商品として、製造を続けることになりました。

飲めば飲むほど味わい深い「紫雲 大洋盛」
常温またはぬる燗がおすすめ
飲めば飲むほど味わい深い「紫雲 大洋盛」。常温またはぬる燗がおすすめとのこと。

―味わいの特徴は?

中山 吟醸酒と同等に米を磨いた普通醸造酒で、飲み飽きない淡麗で軽快な味わいです。「料理を引き立て、料理によって引き立てられる酒」、ひと口飲んだ時のインパクトは強すぎることなく、飲むごとに味わいが深く感じられるような酒です。

村上の地酒文化の発信拠点としてオープンした展示場「和水蔵」
村上の地酒文化の発信拠点としてオープンした展示場「和水蔵」。試飲販売コーナーもある。

―今後酒造りとともに力を入れていかれることとは?

中山 2011年3月に常設展示場「和水蔵(なごみぐら)」を開きました。地元村上の観光気運を盛り上げていきたいと思います。また村上の米をつくり、酒をつくり、人をつくり、日本酒を通じて地元のコミュニティづくりにも貢献して、本物の地酒文化を創造・発信していきたいと思います。

―村上を訪ねてご当地のお酒と鮭を味わってみたいですね。本日はありがとうございました。

山廃特別純米 サケ×サケ 大洋盛

「山廃特別純米 サケ×サケ 大洋盛」(720ml)
価格:¥1,518(税込)
店名:大洋盛オンラインショップ
電話:0254-53-3145
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.taiyo-sake.co.jp/shopping/item.asp?id=10392
オンラインショップ:https://www.taiyo-sake.co.jp/shopping/default.asp

紫雲 大洋盛

「紫雲 大洋盛」(720ml) 大洋盛紫雲会加盟特約店限定酒
価格:¥825(税込)
店名:こちらの商品は新潟県村上市岩船郡内の特約店でのみ販売。特約店が開設するオンラインショップにて購入可能
商品URL:https://www.taiyo-sake.co.jp/item_shiun.asp
※「山廃特別純米 サケ×サケ 大洋盛720ml」も購入可能な特約店もあり。

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
中山芳則氏(大洋酒造株式会社 代表取締役社長)

1965年新潟県村上市生まれ。1988年大洋酒造株式会社入社。1990年新潟清酒協会立新潟清酒学校に7期生として入学し3年間修学。2004年営業部課長、2013年製品部部長、2015年取締役製造・製品部統括部長、2019年に代表取締役社長に就任。
企業理念には「日本に大洋酒造ありと言われる 小さくてもキラリと光る酒蔵をつくります」と掲げ、品質本位の酒造りを続けている。

<文・撮影/大喜多明子 MC/栗原里奈 画像協力/大洋酒造>

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