
ガラスのゆらぎを愛でる 北欧のガラス作家の花瓶「山野アンダーソン陽子/VASES LongVase」
2025/08/06
今回、編集長アッキーが気になったのは、北欧のガラス作家の花瓶です。商品を販売している株式会社dieci(ディエチ)代表取締役の田丸祥一氏に商品の魅力について取材陣がお話を伺いました。

株式会社dieci 代表取締役の田丸祥一氏
—事業を始められた経緯を教えてください。
田丸 私はずっと大阪に住んでいて、音楽の影響からファッションやデザインに興味を持つようになりました。最初は日本のブルーハーツなどを聞いていて、そこから60~70年代の海外の音楽にのめり込みました。そのうちレコードジャケットのデザイン、そこに描かれている絵、そして歌っている人たちのファッションに魅力を感じるようになりました。
16歳の頃からは大阪のアパレルメーカー「マンボラマ」のデザイナー・小澤健氏のお店に通っていました。最初は服を買いに行っていたのですが、18歳の時に小澤さんが「カフェコロンビア」という飲食店をオープンされ、初日にお邪魔したところ、「働かないか」と誘われました。若かったこともあり、楽しそうに思えたので、そのままアルバイトで入社させていただきました。そこで洋服の販売を学び、22歳まで働いた後、東京の会社に引き抜かれて百貨店のインショップを担当しました。お金はたくさんいただけたのですが、小澤氏のところで感じていた刺激や学びがなく、1年半ほどで「自分らしくない」と感じて辞めてしまいました。
その後、ヨーロッパを半年ほど回って、ベルギーのアントワープという街に出会いました。当時はマルタン・マルジェラやドリス・ヴァン・ノッテンなどがまだそれほど有名ではなく、街を歩いているような時代です。アントワープはファッションとアンティークのストリートがあって、ファッションと家具が融合されている街でした。当時の日本はファッションはファッション、インテリアはインテリアと分かれていましたが、アントワープではその境界がありません。この融合を大阪でできれば喜んでくださる方もいるのではないかと思えたのが事業を始めたきっかけです。アンティーク家具をたくさん買い付けて帰ってきて、1999年に会社を立ち上げました。

それぞれサイズが違う中から選べる。
—お客様はどのような方が多いですか?
田丸 当初は大阪のお客様がほとんどでしたが、今はSNS、特にインスタグラムのフォロワーが5万人近くいることもあり、遠方から休みの日に来てくださる方、海外からのお客様も増えています。中国や韓国の方も最近非常に多いです。飲食店と生活用品の店舗とアパレルの店舗がありますので、服だけではなく幅広い方に興味を持っていただけているのも要因の一つだと思います。

dieciのためにリサ・ラーソンがデザインしたネコのシリーズ。
—今回ご紹介する「山野アンダーソン陽子/VASES LongVase」について教えてください。
田丸 私はスウェーデンの陶芸作家であるリサ・ラーソン氏と25年ほど前に知り合いました。当時は日本で今のような北欧ブームが起こっていなかったので、リサ・ラーソン氏自身もそこまで有名ではありませんでした。
工場に行くと「今からリサが来る」と言われて、実際に会うことができました。当時68歳くらいの彼女に、25歳の私が「何しに会いに来たの?」と言われながらも(笑)、話をするうちに親交が深くなったのです。それから当社でリサ・ラーソン氏の商品を取り扱うようになり、これが店舗の卸業展開の基盤となりました。
山野氏はガラス作家で、共通の友人から紹介されて知り合いました。日本の方でスウェーデンの男性と結婚されているので日本語も話せて、スウェーデンに行くたびに会って交流を深めてきました。
今回ご紹介するベース(花瓶)は、ハンドブロウでぽってりと柔らかい印象のシルエットが特徴です。同じロングベースでもハンドブロウならではの形の違い、揺らぎ感、それぞれの個性が楽しめます。


美しいが機能性を大事にしている山野氏の作品。
—実際に現地に足を運ばれることが多いのですね。
田丸 今はインターネットがありますが、やはり現地に行くことの大切さは何にも変えがたいものがあります。行って何も得られなかったとしても、日本にいるだけでは感じられないものがある。小澤氏のところでも学んだことですが、小澤氏が年に数回イギリスに行かれて、そのたびに面白いものや情報を持ち帰ってくるのを見ていました。なぜそこの町でそのものが作られているのかを知ることが、販売力に大きく影響すると思います。
—商品を販売する上で大切にされていることは何でしょうか。
田丸 ストーリーを伝えることが生命線だと思っています。展示会に行ってどのような方が作っていて、今シーズンはどのようなイメージで作られているか、どのような景色の場所でものを作っているかなど、スタッフには深く伝えるようにしています。それをご購入くださるお客様に、体感としてどれだけ伝えられるかが重要です。ただパッと買うのではなく、買う体験に深みを感じていただく。そこが楽しさの一つでもあるんじゃないかと思っています。
大阪での接客は8割が世間話で2割が商品説明です。なかには人生相談をされる方もいらっしゃいます。それでフィーリングが合うと必ずまた来てくださいます。スタッフは接客未経験の方を採用することも多いです。百貨店やチェーン店のような接客とは違うので、色がない方がいいと思っています。
—今後の夢や事業展開について教えてください。
田丸 26年間やってきて会社は大きくなってきていますが、「こうしたかった」という明確な夢があったわけではありません。売り上げを大きくしたいとか、お店を大きくしたいというのは結果だと私は思っています。いい人に出会っていいものと出会って、こういう形になってきました。これからも同じように、まだ会ったことのない人や行ったことのない場所に行って、それが新しい仕事につながっていけばいいなと思っています。
―貴重なお話をありがとうございました。

「山野アンダーソン陽子/VASES LongVase」
価格:¥13,200(税込)
店名:dieci
電話:06-6882-7828(10:00~17:00 土日祝除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://shop.dieci-cafe.com/?pid=179095345
オンラインショップ:https://shop.dieci-cafe.com/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
田丸祥一(株式会社dieci 代表取締役)
1975年大阪府豊中市生まれ。有限会社マンボラマにて修行の後、1999年にdieciを開業。現在大阪市内にて異なる業態にて3店舗を構える。
<文/垣内栄 MC/藤井ちあき 画像協力/dieci>