
高齢者に大人気。履きやすく歩きやすいシューズ 香川発「ライフステップ」
2025/06/17
今回、編集長アッキーが気になったのは、高齢者向けの履きやすく、歩きやすいシューズです。商品を製造・販売している徳武産業株式会社 代表取締役会長の十河孝男氏と代表取締役社長の德武聖子氏に商品の人気の秘密を取材陣が伺いました。

徳武産業株式会社 代表取締役会長の十河孝男氏と代表取締役社長の德武聖子氏
―創業の経緯をお聞かせください。
十河 先代である義父が1957年に、綿手袋縫製工場として創業しました。その後、家庭用スリッパや学童用シューズの縫製の事業で業績を伸ばしましたが、義父が急逝し、私が2代目として事業を継承しました。OEMメーカーとしても事業展開していましたが、独自商品開発の必要性を強く感じるようになりました。そして、お年寄りの方々に向けた安全な靴「あゆみシューズ」を発売するようになりました。「あゆみシューズ」が誕生して、今年でちょうど30年になります。

ライフステップはすべり台状の履き口で履きやすい。
―「あゆみシューズ」が誕生した経緯を教えてください。
十河 きっかけは私の友人で老人施設の園長から「お年寄りが転倒して困っている。何とかならないか」と相談されたことです。そこから2年間、老人施設を訪ね歩き、多くのお年寄りの足の悩みに向き合ってきました。むくみや腫れ、左右の足の大きさの違い、変形など、そんな方にこそ合う靴が必要でした。だからこそ「片方販売」や「左右サイズ違い販売」という、業界では非常識だったことにも挑戦しました。当時国内に約12,000社の靴メーカーがありましたが、高齢者のニーズに応えていた企業はありませんでした。ニーズはあってもその声は“見えづらい”ものだったのです。
あゆみシューズを発売した1995年は大赤字でしたが、施設で出会ったお年寄りの姿が、私の原動力でした。何としてもこのビジネスを成功させて、お年寄りの皆さんに歩く喜びを取り戻していただきたかったのです。
現在は国内の介護シューズ市場でシェア55%(数量ベース)を有し、販売累計足数は2,400万足を超えましたが、その分だけ物語があります。靴は単なる道具ではないのです。
―お客さまからの声で特に心に残っているエピソードはありますか?
十河 ある方からビデオメッセージをいただいたことがありました。亡くなったお父様が愛用してくださっていたそうで、「亡くなる前日まで、自分の足で歩けました」とおっしゃっていました。それを聞いたときは「やってきてよかった!」と心から思いました。
―今回ご紹介する新商品「ライフステップ」が生まれたきっかけを教えてください。
十河 ある医師の方から「歩行に不安を抱えている高齢者のために、もっとしっかりと支える靴は作れないか」と言われたのがきっかけでした。「あゆみシューズ」は“履きやすさ”“脱ぎやすさ”を重視した作りです。でも「ライフステップ」は、歩くときの安定性と歩行補助に重きを置きました。目的が違うのです。

2枚形状のベロで巻き込みにくい。
―開発にあたって工夫された点はございますか。
德武 理学療法士の方々の意見を徹底的に取り入れました。実際の歩行訓練やリハビリの現場で求められている性能を「靴の形」で実現したのです。普通の靴とは違って、これは“歩きやすさ”を追求した靴です。しっかりと踵をホールドし、足首を安定させ、つま先の蹴り出しまでサポートする構造にしています。
歩行リハビリを支えるツールとして、理学療法士さんからも「こんな靴を待っていました」と言っていただけました。

ベルトで調整が可能。
―どのような方に向いている商品ですか。
十河 たとえば、骨折からの回復期の方、脳卒中後のリハビリをしている方など、歩く力が不安定な方に向いています。介護度でいうと「要支援」から「要介護2」程度の方が中心です。「靴が原因で外出をあきらめてしまった方」にも履いてほしいと思っています。しっかり歩ける安心感があれば、外に出て人に会うきっかけにもなります。

メッシュ素材で一年中快適。
―これまでの「あゆみシューズ」と「ライフステップ」の今後の位置づけはいかがでしょうか。
十河 「あゆみシューズ」が“生活を支える靴”だとしたら、「ライフステップ」は“生活を次のステップへ進める靴”。徳武産業としてこれからはこの2本柱でお客様のニーズに応えていきます。「歩くこと」は生きることにつながっています。この靴が、もう一度外に出る勇気、もう一歩踏み出す力になってくれたらうれしいです。
德武 単に商品を並べるのではなく、「その方に本当に合った一足」を見極めて提案できる企業でありたいと思っています。

つま先が上がり、つまずきにくい。
―今後の目標についてお聞かせください。
德武 65歳以上の方はすでに約3,600万人、要介護認定者は約720万人いて、今後はさらに増加していきます。しかし、私たちが年間に届けているのは170万足ほど。まだまだ、必要な方に届けきれていないので、お一人おひとりの“生活の質”を少しでも高めるための“靴”を届けたい。そんな想いで取り組んでいます。
今、会長が中国をはじめアジアへも販路を広げています。中国では65歳以上の高齢者が約2億3,000万人と桁違いです。リハビリ病院や義肢装具の会社、老人施設などを訪問して、実際にお年寄りの足を見ながら最適な靴を提案しています。心の寄り添いも含めて、日本と同じ姿勢で取り組んでいます。
韓国でも現地の企業から「あゆみシューズを扱いたい」との声があって、現在は中国の販売会社を拠点として、韓国や台湾、香港などにも展開を広げようとしています。
―海外でも選ばれる理由はどこにあるとお考えですか?
十河 一つは、商品自体の機能性です。軽くて転びにくい、履きやすい、脱ぎやすい。それに加えて「Made in Japan」への信頼です。製造が中国であっても、徳武産業が監修し、品質管理している安心感があると考えています。
そして、今までお客様の声を何千・何万と積み上げてきたからこそ、その声を反映できています。現場に足を運んで、お一人おひとりと向き合ってきたことが、商品力に直結していると思います。
―貴重なお話をありがとうございました。


「ライフステップ」
色:ブラック/グレー
サイズ:6種類(M~5L)
価格:両足 ¥6,490(税込)、片方 ¥3,245(税込)
店名:あゆみシューズショップ
電話:0120-947-539(10:00~17:00 土日祝除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://store.tokutake.co.jp/c/gr1/gr2/1606
オンラインショップ:https://store.tokutake.co.jp/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
十河孝男(徳武産業株式会社 代表取締役会長)
1947年生まれ。高校卒業後、1966年に香川相互銀行(現香川銀行)に入行。同銀行で6年間働いた後、手袋会社で勤務。1984年に義父が経営する徳武産業株式会社に入社し、急逝した義父の後を継いで社長に就任。1995年に主力商品である高齢者用ケアシューズ「あゆみ」を完成させた。2015年代表取締役会長就任。
德武聖子(徳武産業株式会社 代表取締役社長)
1972年生まれ。短期大学卒業後、香川銀行を経て、1997年に父が経営する徳武産業株式会社に入社。総務部、企画開発部での経験を経て、2019年代表取締役社長(4代目)に就任。社員の約7割を占める女性が働きやすい環境へと変革を推進。会社の経営を担う傍らで6人の子供を育ててきた。百年企業を目指しながら、主力商品のケアシューズ「あゆみ」の更なる普及と新規事業にもチャレンジしている。
<文/垣内栄 MC/藤井ちあき 画像協力/徳武産業>