
コアな泡盛ファンをうならせ、泡盛初心者をも虜にする「飲み比べセット(菊之露akari、V.I.Pゴールド、サザンバレル)」
2025/07/16
2024年12月、日本酒や焼酎、泡盛といった日本の「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産に登録されました。米や麦などを蒸し、麹を作り、もろみを発酵させるなど、日本各地の風土に応じて発展し、受け継がれてきたことが評価され、認められたのです。編集長アッキーこと坂口明子が注目したのは、宮古島で醸される泡盛の魅力がギュッと詰まったお得な「飲み比べセット」。この商品について、菊之露酒造株式会社の代表取締役・下地一盛氏に取材陣がお話を伺いました。

菊之露酒造株式会社代表取締役 下地一盛氏
ー宮古島で最も歴史のある酒造所とのこと。御社の沿革をお聞かせください。
下地 もともとは和歌山から宮古島に移住した、中尾菊次郎という人が「中尾酒造」という酒造所で「菊之露」というお酒を造っていたんです。ところが、後継者がいないために閉業することになって。それを、伊良部島で「宮の華」という酒造所を兄弟で営んでいた私の祖父が、中尾氏の工場ごと買い受けて宮古島に移住し、「菊之露酒造」として会社を設立しました。1965年のことです。その後、1980年に2代目である私の父が那覇営業所を開設するなど商圏を宮古島外へ拡げ、積極的な営業展開により出荷量を伸ばし、沖縄本島でも大きな規模の酒造会社に成長しました。

沖縄県宮古島のにぎやかな商店街「西里通り」にある本社
ー急成長した要因は、何なのでしょう?
下地 一つは、古酒の増産設備の拡充です。泡盛は、寝かせれば寝かせるほどまろやかな味になって付加価値がつくのですが、そのためにはお酒を寝かせておく施設が必要です。祖父は、まだ古酒がさほど注目されていなかった時代に「この先、古酒の時代が来る」と見越して広大な土地を買い、貯蔵タンクを買っていたんです。
もう一つは、昔は、泡盛というのは設備もままならかったので、蒸留したてで瓶詰めしていたんです。そうすると瓶の蓋のところに油が溜まってしまうので、その油を一度捨ててから飲んでいました。それでも何となく油臭い。なので、泡盛よりもウイスキーを好んで飲む人が少なくなかったそうです。
その問題を解決するために、弊社では泡盛業界で初めて冷却濾過器を取り入れました。お酒を瓶に充填する前にタンクに入れ、冷蔵機で冷やし、品温を2度くらいまで下げるんです。品温が下がると油が浮いてくるので、それを除去してから瓶詰めするわけです。泡盛を飲みやすくした画期的な技術で、その後、泡盛造りの新たな技術体系の一つとして確立しました。

第2工場には約600本(約600万L)のタンクが設置され、県内随一の貯蔵量を誇る。

古酒の量と質を保つために重要なのが「仕次ぎ(しつぎ)」と呼ばれる技術。
おいしい古酒がなくならないように、飲んだ分だけ新しい泡盛をつぎ足していく。
ー初代の先見の明によって急成長を遂げられたのですね。社長としては、家業を継ぐのは当然のことだったのでしょうか?
下地 子どもの頃、祖父に手を引かれて工場の中をぐるぐる探検したり、祖父が仕事をしている姿も近くで見ていたので、将来は自分もこの仕事をするんだな、と漠然と思ってはいました。3歳くらいの時、父が那覇に営業所を立ち上げるということで、家族で宮古島を出て那覇へ。高校まで地元の学校に通い、大学進学とともに東京に出ました。卒業後は沖縄に戻り、金融の知識やスキルを身につけておけば、将来自分が会社を継いだときに役に立つかもしれないと考えて銀行に就職。2014年、29歳のときに菊之露酒造に入り、那覇営業所に勤務して市場拡大に取り組み、2020年に代表取締役に就任し、現在に至ります。

那覇営業所。
ー社長に就任して、ご苦労なさったことは?
下地 2020年に父が亡くなり、私が社長になったわけですが、そのタイミングでコロナ禍になってしまって。その時、飲食店さんは最も煽りを受けた業態だと思いますが、弊社は同業他社さんと比べると、それほど大きなダメージは受けなかったんです。
というのも、弊社の商品は量販店、ディスカウントストア、コンビニエンスストア、居酒屋と色々なところに流通しているので、居酒屋さんがクローズしてもその分、他の場所の売り上げでカバーできたからなんだと思います。そのとき痛感したのは、販売チャネルを多く持っていれば、コロナ禍のような非常事態へのリスクヘッジになるんだな、ということです。そのために今の時代、何をやるべきかと考えたら、ECしかないな、と。
ーそれまで、インターネット販売はされていなかった?
下地 先代はパソコンやインターネットに疎くて、2020年まではECサイトを持っていないどころか会社のホームページもほとんど更新されていない状態でした。ただ、だからこそ絶対に伸びしろがあるんじゃないかと。当時は外にも営業に行けなかったので、いろいろ調べたり、外部のウェブマーケッターを招いたりしながら順調に売り上げを伸ばしているというのが、今の状況です。
コロナ禍では大変な思いをしましたけど、それがきっかけでECを始められたし、出荷量が落ちたタイミングで工場も刷新できたんです。コロナ禍が明けて、宮古島も今インバウンドで盛り上がって泡盛の需要も増えているので、あの時に工場に手を加えておいてよかったなと。
ーまさに、ピンチをチャンスに変えられたのですね。ECサイトの売り上げとしては、いかがですか?
下地 スタートの伸びはありました。とくに送料を無料にすると、待ってましたとばかりに全国の方たちからご購入いただいて。だいたい前年比20%、多い時で50%くらいで成長しています。でも、数字としては小さいので、まだまだこれから。現在、大手モールさんにも出店していますが、せっかく自社のECサイトを立ち上げたわけですから、「ここでしか手に入らない」というような商品も揃えていくつもりです。
ー今回、ご紹介させていただく「飲み比べセット(菊之露akari、V.I.Pゴールド、サザンバレル)」も、オンライン限定商品ですね。このセットについて、お聞かせください。
下地 弊社の代表的な、人気3銘柄のセットです。それぞれ単品でお買い求めいただくより、セットで購入していただくことで価格が約4%オフと、お得です。まずは「V.I.Pゴールド」について。これは弊社の一番の売れ筋商品で、おそらく沖縄県内の居酒屋でもっとも多く流通している古酒です。このお酒は、常圧蒸留という伝統的な泡盛らしい造りをして、それを8年熟成酒を軸として味を整えて出しています。ちょっとプレミアム感がありながら、比較的手に取りやすいお酒、どなたにも飲んでいただけるような、王道を狙って造っているお酒です。古酒ならではの味を楽しんでいただきたいので、5対5の割合での水割りやオンザロックがおすすめです。

沖縄県内のみならず全国の居酒屋で目にしないことはない!?
「菊之露古酒V.I.Pゴールド」。アルコール度数30度、720ml。
約8年間貯蔵・熟成した古酒をブレンドすることによって甘みと芳醇な香りが広がり、
古酒ならではの深いコクとまろやかな味わいが堪能できる。
累計販売本数1,000万本を突破した超人気泡盛。
サザンバレルは、泡盛を樫樽で貯蔵・熟成させたお酒です。炭酸で割ると樫の香りのする泡盛ハイボールとして、おいしく味わっていただけます。

「菊之露古酒 サザンバレル」。アルコール度数25度、720ml。樽貯蔵した琥珀色と樫樽の華やかな香りが特徴。
ー「菊之露akari」は、瓶の形もラベルのデザインも、モダンですね。
下地 はい。こちらは2023年にリリースした新商品で、炭酸で割って飲むことを前提にしたお酒です。常圧蒸留ではなく減圧蒸留を採用したことでフルーティーな味に、そしてさらに弊社が独自に開発した製法によって、甘さを残しつつも爽やかで、すっきりとした味わいに仕上げています。
「V.I.Pゴールド」を泡盛の王道とすると「菊之露akari」は応用範囲の広いお酒で、カクテルベースでもサワーベースでもOK。アルコール度数も25度と低めですし、すっきりした味わいなので、泡盛を初めて飲むという方にも口にしていただきやすいと思います。「菊之露akari」特設サイトがあり、弊社が考案した100のレシピやお客様から寄せられた飲み方のアイデアなども掲載されていますので、どうぞ覗いてみてください(https://www.kikunotsuyu.co.jp/lp/akari/)。

「菊之露akari」アルコール度数25度、720ml。2023年6月リリースの新商品。
菊之露らしい甘さを残しつつ、爽やかですっきりとした透明感のある味わいが特徴。
泡盛の裾野を広げるであろう、菊之露の期待の星!

一番のおすすめは、 akari3:炭酸水7のソーダ割り。その名も「aソーダ」。
グラスいっぱいに氷を入れ、軽く混ぜたら完成。お好みでレモンを絞っても。
こんなにオシャレな「菊之露 akari aタンブラー」(¥400/税込)も!
ー「菊之露akari」という名前の由来は?
下地 ライトな酒質でポップなイメージの、大衆酒場に攻めていける商品をと考えていたのと同時にリブランド事業も進めていて、会社が代替わりをして生まれ変わったよ、というメッセージの象徴として、このお酒を位置づけました。商品のコンセプトは「大衆酒場に当たり前のようにある定番のお酒」です。コロナ禍でまだお酒業界が厳しいなかでこの企画を進めていたこともあって、このお酒でお店が明るくなってほしいなということで「akari」という名前を。ラベルのデザインも、これを飲むことによってみなさんに明るい気持ちになってほしいという思いと、大衆酒場の赤ちょうちん、そして宮古島の太陽をイメージしています。
ーお客様の評判はいかがですか?
下地 まったく知名度のないところから、少しずつプロモーションしながらお客様に実際に飲んでいただいていますが、「こんなにおいしくて、しかもリーズナブルなお酒があるとは思わなかった」「すごく飲みやすい」というようなお声を頂戴しています。
従来の泡盛、古酒というところではなかなかリーチできなかった、20代30代の若い世代の方や女性の方にも「akariだったら飲めます!」というご意見をいただいています。泡盛を、もっともっと多くの方に味わっていただきたい弊社としては、うれしい限りです。
実は、沖縄のバーテンダーの方々にも評価していただいているんです。というのも、沖縄に観光にいらした方はやっぱり泡盛を使ったカクテルを飲みたいとおっしゃるそうなのですが、一般的な泡盛は個性が強くてカクテルの割材としてはなかなかむずかしい。その点「菊之露akari」はお客様に勧めやすいそうです。ただ、カクテルベースになる蒸留酒は、ウォッカしかりジンしかり、アルコール度数が高い。「菊之露akari」も40度以上あったらいいのにというお声をいただいていました。そこで、アルコール度数44度の「菊之露akari DOUBLE FOUR」という姉妹商品を企画しまして、近々発売予定です。
ーでは最後に、今後の展望をお聞かせください。
下地 泡盛も日本の国酒の一つとしてユネスコに登録されて話題になりましたが、やはりお酒全体としては下り坂になっているのは事実で、泡盛業界内でも中小規模の酒造所などは泡盛だけでは利益が出せないということで、ほかのものに商機を見出そうとしてるケースも少なくありません。
そうした厳しい状況下にありますが、弊社としてはやはり、もともとある国酒としてのブランドで勝負していこうと考えています。タンクの貯蔵量が県内一であることを活かして、コアな泡盛ファンの方々によろこんでいただけるよう古酒のラインナップも増やしていきたい。また、「菊之露akari」によって泡盛に手を伸ばすことのなかった層にもよろこんでいただけている感触があるので、今後もどんどん泡盛の裾野を広げていくつもりです。
そのためにも、文化の担い手として本格焼酎の泡盛の拡充に努めながらも、動画やCMなどを通じてもっとファッショナブルに、ライトでポップな、親しみやすいイメージを打ち出して、泡盛業界全体のイメージを変えていければと考えています。
ー泡盛の可能性がどんどん広がっていきますね。わくわくするお話、ありがとうございました!

「飲み比べセット(菊之露akari、V.I.Pゴールド、サザンバレル)」各720ml
※オンラインショップ限定品
価格:¥5,000(税込)
店名:きくのや商店
電話:098-868-5086(9:00〜17:00 土日祝除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://kikunotsuyu.thebase.in/items/76106859
オンラインショップ:https://kikunotsuyu.thebase.in/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
下地一盛(菊之露酒造株式会社 代表取締役)
1985年沖縄県宮古島市出身。日本大学経済学部卒業後、沖縄銀行に入行し融資担当として勤務。2014年12月に家業である菊之露酒造に入社。那覇営業所に勤務し、営業活動を通じて市場拡大に取り組む。2020年4月に代表取締役に就任してからは、マーケティング戦略の強化や品質向上に取り組んでいる。伝統を守りながらも現代の消費者ニーズに対応した製品開発を進めている。
<文/鈴木裕子 MC/田中香花 画像協力/菊之露酒造>