今回、編集長アッキーこと坂口明子が気になったのは、「小豆島天領真牡蠣」。一般的に牡蠣は秋~春が旬ですが、こちらの牡蠣は真夏でもおいしくいただけるのだそうです。養殖を行なっているのは、海産物を買い取り、一次加工や販売を手掛けている池田漁協株式会社。一年中食べられる秘密と魅力、そして「小豆島天領真牡蠣」が誕生するまでのお話を、池田漁協株式会社・代表取締役社長の中野郁夫氏と、同社の中村美紀氏、濱田勇氏に伺いました。
年中”旬”の採れたて極上品!池田漁協の「小豆島天領真牡蠣 殻付・加熱用 15個セット」
2024/05/14
池田漁協株式会社 代表取締役社長の中野郁夫氏と、中村美紀氏、濱田勇氏
―通常、牡蠣といえば10月~翌年4月までの半年が”旬”と言われていますが、「小豆島天領真牡蠣」は旬を問わず、一年中いただけるとか。それは、なぜですか?
中野 おっしゃるとおり、真牡蠣は春から夏にかけて産卵することから身がやせて味が落ちるため、一部地域をのぞいて国内産はほとんど流通しなくなります。しかし、「小豆島天領真牡蠣」は自然界にいる「二倍体真牡蠣」とは異なる「三倍体真牡蠣」というものです。三倍体真牡蠣は二倍体真牡蠣に比べて産卵しにくいという特性があり、産卵時期も夏以降になるため身がやせにくく、一年を通してプリッとしたおいしい状態で出荷できるのです。
濱田 三倍体の技術は、種なしぶどうにも使われていて、産卵でエネルギーを使わない分、成長しやすいんです。また、産卵でエネルギーを奪われると牡蠣自体の免疫力も落ちると言われていますが、三倍体はそういうことが起こりにくいので、菌による汚染リスクが低いという特徴があります。
「小豆島天領真牡蠣 殻付・過熱用 15個セット」。
環境に配慮した再生紙利用のパッケージ。
軍手とオイスターナイフ付きなのもうれしい。
出荷前には、独自の衛生管理基準に基づいて、
22時間以上紫外線殺菌海水による浄化処理を行なっています。
―「小豆島天領真牡蠣」は、育て方にも特徴があるそうですね。
濱田 一般的な養殖牡蠣は、イカダなどから牡蠣を付着させたホタテを海中に吊り下げるのですが、弊社では、バスケットを使ったシングルシード生産方式を採用しています。1つのバスケットの中に60~80個の牡蠣の赤ちゃんを入れ、それを海中に浸して育てるという方法です。
時期にもよりますが、週に2~3回バスケットをひっくり返し、天日干しするフリップファーム方式も採用しています。天日干しの間、牡蠣は蓋を閉じ、海中に浸されるとまた蓋を開けます。バスケットをひっくり返すたびに牡蠣は蓋を開け閉めするわけですが、それを繰り返すことによって、人間が筋トレで筋肉を鍛えるのと同じようなことが起こり、貝柱が太く強くなるんです。
バスケットをひっくり返すと、その中で牡蠣がコロコロ転がり、お互いに擦れ合うことで牡蠣の先端が削れます。本来なら、牡蠣の中身が大きくなるにつれて殻は広く長く成長しますが、先端が常に削られているために長く成長できず、その分、下の方向に成長して、殻が深く丸くなります。殻に深さがある分、身がパンパンに詰まって、殻自体は小ぶりながら身入りのよい、プリプリの牡蠣になるんです。
赤ちゃんをバスケットに入れ、海の中へ。
週に2~3回バスケットをひっくり返します。
バスケットをひっくり返す手間はかかりますが、身入りがよく、
海藻類やフジツボなども付着しにくいので牡蠣殻をきれいに保つことができます。
小ぶりで、コロンと丸みがある。
殻の表面にはほとんど何も付着しておらず、きれい!
電子レンジを使って、簡単に酒蒸しができる。
牡蠣の表面を洗って汚れなどを落としてから、
牡蠣の殻の膨らんだ方を下にして耐熱容器に並べ、
大さじ2杯程度の酒(または白ワイン)をかけ、
ラップをして電子レンジ(600wで5分程度)で加熱すれば完成!
加熱している間に蓋が開いて…
蓋の下にナイフを入れ、
ちょっと力を入れただけで蓋が取れ、ぷっくりした身が!
身が締まり、貝柱もしっかり。濃厚な味わいで、食べ応え十分です。
―一年中収穫でき、プリプリに身が太った牡蠣なんて、牡蠣好きにはたまりませんね。ところで、そもそもなぜ「小豆島天領真牡蠣」の養殖を始めたのですか?
中野 12年前頃、池田漁協がある小豆島の中央あたりの漁場では、もともと海苔の養殖が盛んで、池田漁協の主力漁業は海苔養殖でした。ところが近年、海の環境が変わって海苔養殖が不振になり、海苔養殖業者が次々と廃業したんです。漁業者がいなくなれば漁協職員の収入の道も絶たれるので、何とかしなくちゃいけない。漁師さんと漁協職員の収入を安定させるために、海苔以外の加工品販売に取り組み始めたのです。
小豆島の周辺は地形も多様なことから潮の流れが複雑で、サワラ、いりこなどを始めとする水産物の質が高いんです。素材がよいから、それを加工してもおいしいに違いない。そこで、地元の水産加工場と連携してあれこれ試行錯誤しながら、ちりめんをオリーブオイルで揚げた「瀬戸内産オリーブオイル揚げちりめん」などを開発したのです。
瀬戸内の複雑な潮流の中で育まれたちりめんの旨みを引き出し、
オリーブオイル100%で揚げた「瀬戸内産オリーブオイル揚げちりめん」。
―それらの商品は今、「池田屋」ブランドとして販売されていますね。
中村 2017年に商品のパッケージデザインを見直し、統一して「池田屋」ブランドとして販売するようになりました。そして新たに地元のイタリアンシェフと一緒に「コンフィ」などの洋風アイテムも。このコンフィ、人気なんですよ。そのままパンに挟んだり、パスタの具にしたり。冷奴の上に乗せると、おしゃれな豆腐サラダになりますよ。ほかには、バーベキューをする時、アルミホイルに切った野菜と一緒に入れて、鉄板の上でクツクツ煮ると野菜に魚の旨みがしみ込んで、絶品です。
地元レストランの「リストランテ フリュウ」とのコラボで開発した、
オリーブオイルで煮込んだサワラのコンフィ。
小豆島の漁師が一本釣りした旬のサワラを、小豆島の塩で漬け込み、
ハーブ、スパイスとオリーブオイルで煮込んだ、
サワラのおいしさを余すことなく味わえる逸品。
オイルをバケットにつけて食べたり、パスタソースにしても。
他に鯛、イカ、ちりめんじゃこのオリーブオイルコンフィも同時発売。
「サワラのコンフィのサンドイッチ」。
サワラのコンフィと塩ゆでしたじゃがいもをマヨネーズであえ、サンドイッチに。
「オリーブオイル揚げちりめんのトースト」。バゲット(食パンでも)に
「瀬戸内海産オリーブオイル揚げちりめん」とチーズを乗せて焼けば、
ブルスケッタ風に。よく冷やした白ワインとの相性バッチリ!
池田漁協のホームページには、
「池田屋」商品を使った簡単&おいしいレシピが満載。
また、これらをまとめた、こんな素敵なレシピカードも!
ちなみに「池田屋」のトレードマークは藍色ののれん。
「漁協というと、ちょっと入りにくいイメージがあるかもしれませんが、
ホームページやオンラインショップには、
ひょいとのれんをくぐって気軽に訪れていただきたい」という想いが込められているそう。
―その「池田屋」ブランドのラインナップに、「小豆島天領真牡蠣」が加わったのですね。
中野 そうです。漁業者にやりがいを持ってもらえて、安定して収入を得られる方法はないだろうか。そう考えるなかで「牡蠣の養殖がいいんじゃないか」という話になったのです。
濱田 1年中食べられる真牡蠣の養殖を知り、出会ったのが、三倍体真牡蠣のシングルシード生産方式でした。
しかし、経営が厳しい漁師さんたちは、新しいことに手を出しづらい。そこで、まずは我々が試すことにしました。それが一昨年、2022年4月のことです。
古くから小豆島は海上交通の要衝地で、かつては江戸幕府直轄の天領地であり、漁業は非常に栄えていました。そこでもう一度活気づけたいという思いから「小豆島天領真牡蠣」と名付けたのです。
当初は、加熱用のみでしたが、今年(2024年)3月から生食用の販売もスタートし、ご好評いただいています。
―低迷していた漁業が、勇気ある挑戦によって復活!ですね。今後の展望について、お聞かせください。
中野 全国の皆さんに「小豆島天領真牡蠣」を知っていただきたい。関東の方たちにもぜひお召し上がりいただきたいのですが、2024年輸送問題がネックになっており、まずは関西方面をメインに販売しようと、今年からキッチンカーの運営を始めました。
中村 「銀座に直営店を作りたい」と言っていたのですが、それはなかなか叶いそうにないので(笑)、まずは小豆島で獲れたての牡蠣や島の魚が食べられるような、加工所併設の飲食店があればいいな、と話をしているところです。
お取り寄せでお召し上がりいただけたらもちろんうれしいですが、一度、小豆島にいらして、小豆島の自然を感じながら海の幸を召し上がっていただきたい。
濱田 牡蠣のほかにも、アサリや海藻など新たな養殖も手掛けるべく、準備を進めています。あれこれやりすぎだ、という声もありますけど(笑)。
―日本の水産業が元気を失っていると言われているなか、新たな可能性と希望が感じられるお話を伺うことができて、うれしいです。ありがとうございました!
「小豆島天領真牡蠣 殻付き・加熱用15個セット」
※「生食用15個セット」も有り
価格:¥4,960(税込・送料込)
店名:池田漁業協同組合
電話:0879-75-0366(9:00~17:00 土日祝は休み)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://jfikeda.theshop.jp/items/82915399
オンラインショップ:https://jfikeda.theshop.jp
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
中野郁夫(池田漁協株式会社 代表取締役社長)
1958年香川県小豆島生まれ。大学卒業後、営業職などを経て、1982年より池田漁業協同組合の職員として従事。2010年頃から水産加工品の開発・販売を手掛け、販売規模が大きくなるにつれ、経営を支える事業となったが、法律上、員外利用制限がある。そこで2022年3月に池田漁協株式会社を設立。水産加工品の開発・販売部門に加え、牡蠣養殖開始と同時にICT事業部を立上げ、持続可能な小豆島の水産業の活性化に取り組んでいる。
<文・撮影/鈴木裕子 MC/白水斗馬 画像協力/池田漁協>