今回編集長アッキ―こと坂口明子が気になったのは、沖縄発のチョコレート菓子。沖縄で40年以上、特産品を使った菓子を販売している株式会社ファッションキャンディの取締役副社長 宮城涼子氏に、取材陣が伺いました。
沖縄県の郷土菓子、塩せんべいにチョコを染み込ませた「黒い欲望」と「チョコべぇ」
2024/03/11
株式会社ファッションキャンディ 取締役副社長の宮城涼子氏
―まず、2021年に副社長に就任されるまでの経緯を簡単に教えてください。
宮城 私は沖縄で生まれ育ち、専門学校卒業後は8年間キャビンアテンダントの仕事に就いていました。その後、結婚・出産を機に退職し、子どもが大学生になるまで専業主婦でした。
そして夫は不動産会社と商事会社を経営しておりましたが、創業者である夫の父が急逝したことをきっかけに、私が2019年から副社長を務めることに。その後、2020年に株式会社ファッションキャンディの事業継承することになり、2021年に新役員として夫が会長兼社長、私が副社長に就任したという経緯でございます。
―事業継承ということは、もともとファッションキャンディは別の方が経営されていたということですね。
宮城 はい。ファッションキャンディは1975年に知念律子氏が創業した菓子製造販売会社です。カラフルな色のセロファンにお菓子や小さなおもちゃを一つずつ包み、花のレイのようにつないだ「キャンデイ・レイ」を土産物として販売したのがはじまりです。
その後も、観光客向けに沖縄県の特産物を使ったお菓子やチョコレートなど自社商品の開発を続け、長きにわたって産業振興に貢献していました。
知念氏が高齢で事業継続が困難となり、後継者もいないなかで、知念氏の「沖縄県内の事業者に継いでほしい」というご意向と、沖縄の老舗菓子メーカーを絶やしてはならないという宮城社長の思いが合致し、弊社が事業を継承することになったというわけです。
当時の「キャンディ・レイ」や沖縄産マンゴーなどを使ったチョコレート菓子。
―老舗の会社を継承するにあたり、ご苦労が多々あったかと思います。
宮城 菓子事業について無知でしたし、私個人的には事務作業やパソコン操作にも不慣れしたので、ファッションキャンディに残ってくださった社員の方々に教えを請いながら、少しずつ学んでいきました。さらに、コロナ禍に入った頃に事業継承をしましたので、観光客向けの商品がメインだった事業の方向性をどうしようか…という問題にも直面。直営店舗は全て閉じ、オンラインと空港や道の駅での販売に絞りました。また、人員整理というつらい決断もせねばならず…。コロナ禍という特殊な事情であったとはいえ、退職にご理解くださった方々には申し訳ない気持ちを今も持っております。同時に、残った社員のみなさまが楽しいと感じられる職場づくりを行い、「人」を大切にしながら利益もきちんと出せる会社に成長させていこうと決意しました。
―では、今回紹介する「黒い欲望」の開発のきっかけを教えてください。
宮城 コロナ禍で観光客向け商品の売上が激減しましたので、別の事業の柱をつくるべく、新たな商品開発に乗り出しました。
創業者である知念氏はいつも、「お客様に喜んでいただける商品づくり」を大切にしていたと言います。その理念を継承し、観光客の方はもちろん、地元のお客様も喜んでいただけるお菓子づくりをコンセプトにしました。
もともと「ちんすこうショコラ」が観光客の方にとても人気だったのですが、コーティングされたチョコレートは夏場溶けやすいという難点がありました。そこで、チョコレートを塩せんべいに染み込ませるというアイデアを思いつきました。それが、「黒い欲望」です。
「黒い欲望」は塩せんべいのカケラに染み込ませているので、
よりチョコレート感を味わえる。
―塩せんべいというのは、お米からできたバリバリと硬いせんべいですか?
宮城 いいえ、小麦粉からつくられる沖縄の郷土菓子の一つで、サクッと軽い食感が特徴です。
現在40代以上の方はご記憶や経験があると思うのですが、私も中学生の頃、部活の帰りに駄菓子屋さんに寄って、塩せんべいにチョコレートペーストをつけて食べていました。今では駄菓子屋さん自体が減り、塩せんべいにチョコをつけて食べるという習慣もなくなりましたが、この昔懐かしい沖縄県の菓子を再現させて、今の若い世代の人たちに味わっていただきたいと思いました。
チョコペーストは手についてしまったり溶けやすかったりするので、染み込ませてはどうかということで、県内初の試みとして、食品に液体を染み込ませる機械を導入し、「黒い欲望」の開発に至りました。
新商品開発のために特殊機械を導入、工場も新設された。
―その塩せんべいも自社製造ですか?
宮城 県内の塩せんべい専門のメーカー「サンシオ」さんとコラボさせていただきました。チョコの染み込み具合と塩の塩梅がちょうど良かったのです。また、実はこの「黒い欲望」は、塩せんべいのカケラを使っています。塩せんべいは丸い形なのですが、製造工程上どうしてもカケラが出ます。破棄するのはもったいないので活用できないかとサンシオさんからご相談があり、そのカケラにミルクチョコレートを染み込ませてみたところ、とてもきれいに染み込みました。結果として、フードロスの削減にもつながっていると思います。
沖縄の郷土菓子に、食材を使い切る考え方を使って、
新たな商品が生まれた。
―では、「チョコべぇ」についてうかがいます。
宮城 こちらは大きくて丸い塩せんべいに黒糖ミルクチョコレートを染み込ませた商品です。「黒い欲望」は地元の量販店で販売するイメージで開発しましたが、どちらかというとこちらは観光客向けに。しかし、「黒い欲望」がとても好評で、「チョコべぇ」も取り扱ってくださる量販店が増えてまいりました。
どちらも若い世代をターゲットにした商品なのですが、甘じょっぱさが癖になるようで、幅広い世代の方に楽しんでいただいているようです。70代以上の方々にもリピーターが多く、朝ごはん代わりにコーヒーと召し上がってくださっていたり、「模合(もあい)」という月1回の集まりに用意くださっていたりするようで嬉しい誤算です。
黒糖香る甘じょっぱさが止まらない「チョコべぇ」。
―最後に、今後の展望をお聞かせください。
宮城 「しみてるチョコシリーズ」と名付け、今後いろいろと展開していきたいと考えています。2025年に50周年を迎えますので、新商品の開発や復刻商品など様々な企画を考えています。
沖縄県に昔から伝わる琉球菓子を大切にしながら、ますます進化を続けていきたいと思います。
―すばらしいお話をありがとうございました!
「黒い欲望」(約39g)
価格:¥238(税込)
店名:ファッションキャンディオンラインショップ
電話:0120-014-357(9:00〜17:00 土日祝日除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://fashioncandy.shop/shopdetail/000000000332/ct18/page1/recommend/
オンラインショップ:https://fashioncandy.shop/
「チョコべぇ」(10枚)
価格:¥2,484(税込)
店名:ファッションキャンディオンラインショップ
電話:0120-014-357(9:00〜17:00 土日祝日除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://fashioncandy.shop/shopdetail/000000000339/ct18/page1/recommend/
オンラインショップ:https://fashioncandy.shop/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
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<Guest’s profile>
宮城涼子(株式会社ファッションキャンファッションキャンディ 取締役副社長)
沖縄県生まれ。日本トランスオーシャン航空にて8年間キャビンアテンダントとして勤務。2018年からマナー講師として企業や小学校、中学校、高等学校にて各種マナーをレクチャーしている。2021年ファッションキャンディ取締役副社長に就任。
<文・撮影/よしおかまさこ MC/澤水拳太 画像協力/ファッションキャンディ>