岩手・盛岡で150年の伝統を受け継ぐ酒蔵「あさ開」。こちらでは今、若い世代が中心となり新しい日本酒造りに挑戦しています。そこから生まれた新ブランドは、その名も「Wakazo」。このお酒に込めた想いや誕生秘話を執行役員社長の獅子内一義氏に伺いました。
目指すのは時代を拓く日本酒造り!若手が挑戦する黒麹仕込みの新ブランド「Wakazo」
2022/11/11
株式会社あさ開 執行役員社長の獅子内一義氏
―酒蔵としての歴史を教えてください。
獅子内 1871年に南部藩士であった村井源三が創業いたしました。「あさ開」という名は、侍から商人としての再出発と、明治という新たな時代の幕開けにかけたものだと聞いております。もともと盛岡は名水が湧く地域ではあったのですが、酒造りの技術に関してはそれほど高くなかったんです。そのため、当時から有数の酒処であった伏見や奈良の酒蔵で蔵人と寝食をともにし、最先端の技術を習得したようです。
―現在は若手が中心となって酒造りをされているそうですね。
獅子内 私がいま48歳で、上から数えて2,3番目ですね。あさ開は創業以来、村井家の家業として代々受け継がれてきましたが、いま大きな改革期を迎えているんです。現在も代表は村井なんですけれど、「家業ではなく企業にしていきたい」と言っていまして。これからはお客様の声をすぐに形にできるスピード感を持った組織にしていきたい、ということでコロナ前あたりから社内の若返りを図って参りました。縁戚関係のない私が執行役員社長に就任したのもその頃です。先輩たちに助けられてここまできましたので最初は戸惑いましたけどね。中間層がおりませんでしたのでグッと年齢層も下がり、若手中心の会社になってきています。
年若な蔵人たちが醸す「Wakazo」。
原料米には岩手県産の酒造好適米「ぎんおとめ」を使用。
―新銘柄「Wakazo」はどのような背景から生まれたお酒なのでしょうか?
獅子内 弊社は今年で150周年を迎えるのですが、その伝統を次世代に繋げていこうという想いから生まれたお酒です。創業精神「時を拓き、心を開く」に象徴されるように、私どもは新たな時代を切り拓いていく酒造りが信条なんです。150年といえども酒蔵としてはまだまだ若く、歴史ある酒蔵と肩を並べるためには新しいことにも挑戦していかなければいけないと思っていますので。それに加えて、弊社には「現代の名工」を受賞した杜氏がおりますけれども、もう80歳と高齢で。このまま頼ってばかりではいけないということで、社内の若手が挑戦する“新しい酒造り”として始まったのがこのシリーズです。酒蔵もつくり手も成長過程にある“若造”ですので「Wakazo」と名付けました。
歌舞伎の“睨み”を参考にしたデザインは、
伝統にも目を配りつつ、
先の時代を見据えた酒造りへの姿勢を表現している。
―新しいお酒造りに挑戦するなかで印象に残ったことは?
獅子内 このプロジェクトが始動した当初、私は白麹仕込みのお酒を造りたいと思っていたんですが、蔵人たちから「白麹はほかにもたくさんあるから、黒麹のほうが面白いんじゃないの?」という意見が出てハッとしました。麹にはいろいろな種類があって日本酒には黄麹、焼酎には白麹や黒麹を用いるのが一般的とされているのですが、ここ数年は白麹を使った日本酒の人気が高まってきていたんです。つまり私が考えていたのは、“時を拓く”ようなアイデアではなかったんです。創業精神を思い返し、人がやらないことに挑戦し続ける信念を持ち続けたいと、改めて感じた瞬間でした。
―黒麹仕込みのお酒にはどんな特徴があるのでしょうか?
獅子内 一般的にイメージされる日本酒とは、酸味の印象が異なります。日本酒は腐造を防ぐために酸が必要ですので、乳酸を添加する「速醸酛」もしくは自然に酸を発生させる「生酛造り」という製法で造られています。これまで弊社ではより一般的な速醸酛で全てのお酒を造っていたのですが、Wakazoでは乳酸を添加せず黒麹の持つ酸をいかしています。黒麹はクエン酸を多く生成しますから、柑橘系の爽やかな酸味を強く感じていただけると思います。
おすすめの温度は10℃~15℃。
フチが薄く大きめの酒器で味わうと、
穏やかな香りの奥にある酸味や旨味を感じやすい。
―純米吟醸酒と比べて純米酒はより強く酸味が感じられますね。
獅子内 純米酒は少し黒みがかった、ほかにはないユニークな色味も特徴です。この純米酒と純米吟醸酒はWakazoの第2弾、第3弾でどちらも黒麹を使用していますが、とくに純米酒は酒母のほかに仕込みにも黒麹を使用しています。そのため、より強い酸味と濃醇な味わいを感じていただけると思います。
淡く色づいた純米酒。甘みと酸味を感じやすく、
トマトを使った料理とのペアリングもおすすめ。
―純米吟醸酒はかろやかな酸味とみずみずしい味わいを感じました。
獅子内 ほんとうはもっと酸味の強い、“トガッた”お酒にしたかったんですけどね。吟醸酒ならではの香りを出したいがゆえに、黄麹も使っているので、今回はキレイなお酒に仕上がりました。でも、Wakazoに完成形はないと考えていて。その年ごとに新たな味を出していくことが、Wakazoの在り方なのだと思っています。
純米吟醸酒はカマンベールなど白カビ系チーズと相性抜群!
苦味をやわらげ、コクを引き立ててくれる。
―最後に今後の展望をお聞かせください。
獅子内 お客様の求めるお酒を醸していくことはもちろんですが、自分たちがわくわくするようなお酒を世に出していきたいと思っているんです。さまざまな酒米を使っていろんな酒質のお酒も醸してみたいですし、日本酒以外のお酒づくりにも挑んでみたいですね。
―これからどんな個性を持ったお酒が生み出されるのか楽しみにしております。貴重なお話をありがとうございました!
「Wakazo 純米酒 黒麹仕込み」(720mL)
価格:¥1,980(税込)
店名: あさ開「地酒物産館」※電話・FAXにて注文可能
電話:019-624-7200(8:30~17:30)
FAX:019-624-7205
営業時間:9:00~18:00
定休日:年末年始他
商品URL:https://wakazo-sake.com/junmai.html#junmai
公式ホームページ:http://www.asabiraki-net.jp/
「Wakazo 純米吟醸酒 黒麹仕込み」(720mL)
価格:¥2,200(税込)
店名: あさ開「地酒物産館」※電話・FAXにて注文可能
電話:019-624-7200(8:30~17:30)
FAX:019-624-7205
営業時間:9:00~18:00
定休日:年末年始他
商品URL:https://wakazo-sake.com/jungin.html#jungin
公式ホームページ:http://www.asabiraki-net.jp/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
獅子内一義(株式会社あさ開 執行役員社長)
1974年生まれ。1994年に株式会社あさ開へ入社。観光部で全国の旅行代理店へ酒蔵見学などの営業を重ね、現在の観光蔵としての基盤を構築。営業部ではその営業力を活かし、県内のみならず全国へ幅広く営業活動を重ねる。2019年、執行役員社長に就任。
<文・撮影/野村枝里奈 MC/隅倉さくら 画像協力/あさ開>