
天然素材を贅沢に使った和の香りで特別な時間を。京の老舗が贈る「高級線香 微笑(みしょう) 祥薫」と「インセンストレイ takuba」
2025/05/19
飛鳥時代に日本に伝わったとされるお香。とりわけ長く都があった京都では、お香文化が育まれ、発展してきました。今回、編集長アッキーが気になったのは、ひとつひとつ吟味精選された漢薬香料でくつろぎの時間を演出するお香「高級線香 微笑(みしょう) 祥薫」と、おしゃれなインセンストレイ「takuba」です。製造しているのは、京都に本店を置く香老舗 松栄堂。宗教用のお香や茶席用の香木、日常使いの現代的なインセンスなど、さまざまな香りを扱う香老舗として全国的に知られています。12代目で代表取締役社長の畑正高氏に、商品の特徴やお香の楽しみ方、今後の展望などを取材陣が伺いました。

香老舗 松栄堂 代表取締役社長 畑 正高氏
-会社の沿革を教えてください。
畑 江戸時代中頃、初代が丹波篠山から京都に出てきて商いを始めました。実は本社の南にある二条通は漢方薬の町だったんですよ。当時の薬は輸入品で、外来の漢方の素材を専門業者が集めて扱う場所が大阪や京都にはありました。私のところはそれを分けてもらい、お線香とか匂い袋とかお香を作りはじめたんです。京都には仏教各宗派の本山が数多くあるので、各本山に出入りさせていただくなかで専門的なことを教わり、お香を調える商いをしてきたようです。
-畑社長は何代目になられますか。
畑 家業として始めてから12代目。法人になってからは3代目です。

宝永2年(1705)頃、江戸幕府公認の薬種街であった二条通近くに創業。
3代目の頃に本格的に香づくりを行うようになる。
国内での商いに加え、明治時代に日本初の対米輸出成功、昭和初期のシカゴ万博に出展するなど、
早くから海外へ向けた取り組みを始め、今も世界に日本の香りを届けている。

お香の原料となるのが、沈香、白檀などの香木や、丁子、桂皮、竜脳など漢方薬や香辛料としても使われる天然香料。
その主産地の多くは中国やインド、東南アジアなどの海外にあり、
畑社長も若い頃は原料調達のためにアジア各地を飛び回っていたという。

約200種類の香りを扱っている同社。実店舗は京都をはじめ、東京、横浜、大阪、札幌に8店舗を展開。
京都本店(写真)の横には、香りの小さなミュージアム「薫習館」を開設し、お香文化の情報発信にも努めている。
-オンラインショップを始められたのはいつ頃ですか。
畑 うちの会社は通信販売を明治時代からやっているんです。明治・大正時代のカタログにも通販の方法が書いてあります。お香と一口にいってもすごく多様で、仏教用のお香でも宗派やお寺の法事によって違うので、専門的なものは京都の業者から取り寄せないと間に合わなかったのでしょうね。そうした商品の通信販売を戦後も続けてきた。だから、ネット通販を始めるようになって時代の変化を感じた次第です。
-オンラインショップも他社よりずっと前から展開されていたわけですね。今回ご紹介の「高級線香 微笑」ですが、どんな商品ですか。
畑 これはお線香です。線状に作ったお香をお線香といいます。お香は『源氏物語』で書かれるほど生活の中に香りを提供してきたもので、それが江戸時代に線状に作れるようになり、お線香が世の中に出回るようになりました。ところが、鎖国社会でお香に使う香料はほとんど一般に広まらず、代用品で作ったお線香は匂いも期待できないものになってしまったのです。でも京都には平安時代から香料を使う技術があったため、高級なお線香を作る仕事が根付いていったわけです。私たちはさまざまなお香を作っていますが、この「微笑」などを高級線香と呼ぶ理由はそういうところにあります。この「微笑」は毎日使っていただいてもいいですが、特別なときに一本または半分に折って少し使うと、ほかにはない香りを楽しんでもらえると思います。


熟練の技で丁寧に作られるお線香。江戸時代に伝わったお線香作りの技術は、人々の生活に大きな変化をもたらしたと、畑社長。
「一定時間燃えているので、時計の代わりに時を刻んだり、火種として隣の部屋に火を持ち運べたりできる。
現代のスマホと同じくらい革命的だったと思います」
-「微笑(みしょう)」は定番の香りですか。
畑 私自身も毎日使っている香りです。とても穏やかな柔らかい香りで、いろんな場面で使ってもらいたいと思っています。高級線香の香りは、平安時代から伝わる香りを基本に、もう少し柔らかくとか、もう少し個性強くとか、調整をしながら香料の組み換えをして作っています。


厳選した沈香や白檀などの天然香料を原料に、
職人の伝統の技で作られる8種類の高級線香シリーズの一つで、心安らぐ清らかな香りが楽しめる「微笑 祥薫」。
初心者に使いやすい最も短いサイズ(110mm)で、ほかに180mmと250mmも。
名前の由来の「拈華微笑」は、お釈迦様が一輪の花を手に取ったとき、弟子たちの中で一人がそれを見て微笑んだという故事。
-ネーミングはどのように考案されますか。
畑 全種類ではありませんが、仏教の経典の言葉、例えば「南薫(なんくん)」という商品は「薫風自南来(くんぷうじなんらい)」という言葉からきています。
-1本でどのくらいの時間楽しめますか。
畑 この祥薫というタイプは短くて、燃焼時間が25分ほどですが、焚き終わったあとも残り香が部屋の中にあるので、それを楽しんでいただきたいですね。
-どの長さのお線香も使えるのが「インセンストレイ takuba」ですね。
畑 そうですね。これはお線香を香立に立てるのではなく、横に寝かせて焚く商品です。セラミックの素材で作ってあって、好きな長さに折って置いたまま使っていただけます。ヤニの臭いもセラミックフェルトで抑えられます。

線香を寝かせたまま使える「インセンストレイ takuba」。
専用に開発したセラミックフェルトのトレイと竹製の底台を組み合わせたシンプルな形状で、灰が散らないのもうれしい。
9cm、11cm、19cmの3タイプがあり、セラミックフェルトは交換用のレフィル付き。
-畑社長が経営するうえで大事にされていることと、今後の展望を教えてください。
畑 香りはもちろん、私たちの表情や話の仕方、あらゆるレベルであらゆるもののクオリティを積み重ねていくことが、一番大事だと思っています。展望としては、今のクオリティを自分たちの力の及ぶ範囲で長く維持していく。とにかく今提供できるサービス、品質を待ってくださる方々にきちっと出会っていくことだと思っています。
-最後に読者の方にメッセージをお願いします。
畑 私たちは五感でさまざまな情報を得ていますが、嗅覚と香りの付き合い方はほかの感覚とすごく違うんですよ。一つの匂いの世界にいると、嗅覚はすぐその環境にアダプトして匂いがわからなくなる。濃度によって印象が変わるのが匂いの怖さで、例えば、同じ香水ばかり使っていると匂いの濃度がわからなくなって、無意識のうちに濃くつけていってしまう。すると、周りの方には全然楽しくないものになってしまうんですね。だから、一つの香りばかり使うのではなく、いろんなものを使い分けながら楽しんでいただくとリフレッシュできていいと思います。

-本日は貴重なお話をありがとうございました!

「高級線香 微笑(みしょう) 祥薫」(長さ110mm/20本)
価格:¥1,870(税込)
店名:松栄堂ウェブショップ
電話:075-212-5590(本店9:00~18:00 年始除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://shop.shoyeido.co.jp/shop/g/g110420/
オンラインショップ:https://shop.shoyeido.co.jp/shop/default.aspx

「インセンストレイ takuba 19cm」(28×190×20mm)
価格:¥5,170(税込)
店名:松栄堂ウェブショップ
電話:075-212-5590(本店9:00~18:00 年始除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://shop.shoyeido.co.jp/shop/g/g736506/
オンラインショップ:https://shop.shoyeido.co.jp/shop/default.aspx
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
畑正高(株式会社松栄堂 代表取締役社長)
1954年(昭和29年)京都生まれ。大学卒業後、香老舗 松栄堂に入社。1998年(平成10年)、同社代表取締役社長に就任。香文化普及発展のため国内外での講演・文化活動に意欲的に取り組む。著書に『香千秋』(香老舗 松栄堂)、『香清話』(淡交社)、『香三才』(東京書籍)などがある。
<文/山本真由美 MC/田中香花 画像協力/松栄堂>