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ずっと羽織っていたくなる心地よさ。絹100%結城紬で「育てるショール」「真綿まとうショール」

2024/02/29

国の重要無形文化財にも登録されている「結城紬(ゆうきつむぎ)」。蚕の繭から作られた真綿を使って織る絹織物で、動力を一切使わず、すべて職人の手作業で作り上げられています。今回は編集長アッキーが気になった、奥順株式会社 代表取締役社長の奥澤順之氏に、取材陣が話を伺いました。

奥順株式会社 代表取締役社長 奥澤順之氏
奥順株式会社 代表取締役社長の奥澤順之氏

―創業の経緯は?

奥澤 弊社は、私の曽祖父が1907年に創業しました。もともと教師の家系だったのですが、「教師ではなく、商売がやりたい」と、曽祖父が親戚を頼って奥澤家に丁稚として入ったのが始まりです。その後、奥澤家の娘さんと結婚したのを機にのれん分けさせてもらい、弊社が誕生したそうです。そこから結城紬の卸として、東京や京都の問屋さんに商品を提供したり、お貸ししたりしています。

―奥澤社長が代表取締役社長に就任した経緯は?

奥澤 実は、父から「継いでほしい」とはっきり言われたことはありません。ただ、この業界を存続させていく厳しさを肌で感じている中で、同い年くらいの社員の方を見ていると、「私だけ逃げ出してもいいのかな」と思っていました。また、「継いだら父が喜んでくれるかも」「期待されているのかもしれない」とも考えたため、継ぐことを決めました。

弊社に戻ったのは30歳のときで、社長に就任したのは37歳くらいのときです。私で5代目です。

―御社に入社される前は、どのようなお仕事を?

奥澤 陶磁器の製造販売をしている会社に勤めていました。当時は、「苦しい状態をどうにか打開しようと取り組んでいる衰退産業の会社で勉強したいな」と考えていたためです。

私が入社する以前は、主に瀬戸物や磁器の商品を作る際に使う石膏型を作っていたようですが、型だけでは経営が厳しい下請けの立場でした。そのため、自社のオリジナルの型や、消費者向けに繊細で美的な感覚に優れたものを作っていこうという取り組みを始めた頃に入社しました。

高級ホテルの客室で使う食器や海外の日本料理店で使用する陶磁器などの製造・販売などを経験してきました。

―社長に就任されてから、何か苦労したことは?

奥澤 やはりきもの産業は全体的に衰退産業なので、そういう中にいるという大変さはあります。

また、伝統産業全体として、生産のインフラが高年齢化してしまっているので、生産のサプライチェーンが少し弱くなっています。これを改善するには、やはり後継者に立つ若い従事者が、安心できるような環境を未来に作っていけるかがカギだと思います。

そのため、商品を売ることだけでなく、作ることも考えていかなければなりません。特に弊社のような卸は、生産者と消費者の間に立っているので、両方をよりよくしていくことが重要な仕事だと考えています。

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結城紬を伝えるための事業を幅広く展開している奥順株式会社。
製造だけでなく、資料館やショップなども運営しています。

―御社の強みは?

奥澤 強みは、デザイン室を独自で持っているところです。

デザインは、社長や番頭さんなど組織の中枢となる誰か一人の感覚にゆだねられていることが多いのですが、その部分を組織化して棲み分けることで、よりニーズを汲み取った商品作りにつなげています。デザイン室にいるメンバーの年齢層が幅広いため、いいバランスが取れているのかなと思っています。

―御社が運営している総合施設「つむぎ館」とは?

奥澤 結城紬で作った小物を購入できるお店のほか、作り方や歴史について学べる「資料館」、織りや染めの体験ができる「織場館」、結城紬の反物を実際に見られる「陳列館」などを備えています。

この施設があるからこそ、結城紬の歴史や魅力を分かりやすく伝え、お客様により身近に感じていただくことができています。

―御社で展開している商品は?

奥澤 着物やショール、服地のほか、カーテンや壁紙といったインテリア用の生地なども製造しています。

結城紬には、本場結城紬と石下結城紬という2つの商品ラインナップがあります。本場結城紬は、1500年以上前から結城市で伝わってきた織物です。特徴は、繭から始まり、商品が織り上がるまですべて手作業で作られていることです。動力は一切使いません。一方で、石下結城紬は、手作業と動力によって作り上げられています。

万葉集に「筑波嶺の 新桑繭の 衣はあれど 君が御衣し あやに着欲しも」という歌があるほど、筑波山の麓では昔からいろいろな絹織物が織られてきました。特に本場結城紬は、本当に長い歴史の間で育まれてきました。多数の制作工程を経て作られており、その中でも「手つむぎ」「絣括り」「地機(じばた)織り」という3工程は重要無形文化財にも指定されています。

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本場結城紬の原料は、繭から作られた真綿。
真綿は、重曹と一緒に繭玉を煮て袋状に広げたもので、
それを5~6層ほど重ねて袋真綿(ふくろまわた)を作っています。
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石下結城紬の「育てるショール」。
よこ糸で使用されている深みのある緑に、たて糸の赤が映える上品なデザイン。

―今回紹介してくださる商品は?

奥澤 弊社が卸と小売を併用して展開している、「育てるショール」と「真綿まとうショール」を紹介します。

―商品名に込めた思いは?

奥澤 結城紬は、使い込んでいったときにより良さを感じる点が魅力です。そのため、「使いながら育てていく」という意味を込めて「育てるショール」とネーミングしました。

以前は違う商品名だったのですが、カタログのデザインを長年担当している社員から「親しみを持ってもらい、本質を伝えられるような名前にしよう」と提案があり、名前を変更しました。

―「育てるショール」の特徴は?

奥澤 特徴は、絹100%であることと、真綿のふわふわとした感触を肌で感じられるような作りになっていることです。「育てるショール」は石下結城紬で、職人の手仕事と動力機の技術を合わせて作り上げられています。

また、発足当初から「機屋さんによりますが、着物を織る量が少し減ったとしても、ショールの生産でそれを補っていければ、産地の職人さんやメーカーさん助かるんじゃないか」というコンセプトも掲げています。そのため、「育てるショール」は着物と一緒の織機で織っています。

―製造時のポイントは?

奥澤 糸を染める方法です。染めには「先染め」と「後染め」があります。後染めは、加賀友禅や京友禅、江戸小紋などによく使われているもので、白い糸のまま作り上げ、その後に染料につけて染めたり、筆で絵を描いたりします。

一方で、結城紬は先染めで、糸の段階で染めています。先染めのよさは、糸の重なり方によって商品の見え方が変化することです。例えば、グレーにしたいときは黒い糸と白い糸で織るのですが、出来上がりはすべて同じグレーにはならず、角度によって色の見え方が変わって表情が生まれます。弊社では、その先染めの面白さやよさを商品作りに生かしています。

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本場結城紬には、「地機」という織機が使用されていますが、
無地・縞(たて)に限り、「高機(たかはた)」という手織りの織機を用いています。
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結城紬の「真綿まとうショール」。軽くて暖かく、肌触りがいいのが魅力です。

―「真綿まとうショール」の特徴は?

奥澤 こちらのショールは、ふわふわとした心地のよい糸を使用しており、名前の通り真綿をまとっているような感覚で羽織れるのが特徴です。お客様の中には、「触り心地がいいので、寝るとき以外ずっと羽織っています」と言ってくださる方もいるほどです。

また、和装のときに帯が隠れるくらい大判のショールになっています。厚みがあるショールなので、コートが要らないぐらい暖かいのも特徴の一つです。

「真綿まとうショール」には、本場結城紬で使っている「高機」と呼ばれている手織りの織機を、幅の広いショールが織れるように特別に設計してもらい、その織機で織っています。使用する糸が非常にふわふわしていて繊細なため、動力機では織れません。真綿から取った空気をたくさん含んだフワフワの糸の風合いを生かすために、手間がかかっても高機の手織りで、一点ずつ糸に合わせて、よさが生きるように職人さんの経験と感覚で織ってもらっています。

―絹製品が心地よく着られる理由は?

奥澤 絹の繊維自体が人間の髪の毛の50分の1ほどの太さのため、素材としてもチクチクしにくいものだからです。カシミヤや羊毛は素材自体が太く、どうしても刺さるようなチクチク感があります。しかし、絹はとにかく細いため、刺さるような感覚もなく心地よく着られます。

また、滑りにくいのも「真綿まとうショール」の良いところです。ショールを羽織っていると、「滑り落ちてくるから直すのが大変」という方もいらっしゃいますが、「真綿まとうショール」は真綿同士が重なるため、滑り落ちてきません。

―今後の目標を教えてください。

奥澤 大きな目標としては、手に職をつけた「職人さん」と呼ばれる方々が、将来的な展望を持って働ける環境作りを機屋さんや生産者の方々と共にしていきたいと思っています。

もう一つの目標は、国内外・年齢問わず、いろいろな方に結城紬のよさに触れていただける機会を作ることです。具体的には、展示会をやったり、糸が布になるまでの過程が分かる結城紬の絵本やアニメーションを作ったりしたいと思っています。私は、物作りの背景自体に価値があると考えているので、分かりやすく、よりたくさんの人に届けることができれば素敵だなと考えています。

―本日はいろいろと教えていただき、ありがとうございました!

「結城紬 育てるショール 限定カラー -老緑- 絹100% 日本製」(幅約45cm×長さ175cm ※フリンジ部分は含まない)

「結城紬 育てるショール 限定カラー -老緑- 絹100% 日本製」(幅約45cm×長さ175cm ※フリンジ部分は含まない)
価格:¥27,500(税込)
店名:【つむぎの館】公式オンラインストア
電話:0296-33-3111
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://tumuginoyakata-online.com/collections/shawl/products/yuki-tsumugi-silk-shawl-sodaterugennteicolor
オンラインショップ:https://tumuginoyakata-online.com/

「結城紬 真綿まとうショール 多色 絹100% 日本製」(幅約65cm×長さ182cm ※フリンジ部分は含まない)

「結城紬 真綿まとうショール 多色 絹100% 日本製」(幅約65cm×長さ182cm ※フリンジ部分は含まない)
価格:¥74,800(税込)
店名:【つむぎの館】公式オンラインストア
電話:0296-33-3111
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://tumuginoyakata-online.com/collections/shawl/products/yuki-tsumugi-silk-shawl-mawatamatou-multi
オンラインショップ:https://tumuginoyakata-online.com/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
奥澤順之(奥順株式会社 代表取締役社長)

1982年生まれ。陶磁器の企画・制作・販売の会社に勤め、製造管理や店長代理、外資系ホテルの客室食器リニューアル、海外での磁器で作ったシャンパングラスの企画・販売を担当。呉服屋さんで1年修行後、30歳で実家の会社に戻る。37歳のときに社長就任。
身につけた方がより豊かな日常を送れるように、着物と並行してショールなど日常に溶け込むようなアイテムを提案。また、作り手が生き生きとした産地を目指している。

<文/奥山りか MC/石井みなみ 画像協力/奥順>

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