今回、編集長のアッキーこと坂口明子が注目したのは、下町バームクーヘンが販売する「りんごまるごとアップルクーヘン」。シロップ漬けの甘酸っぱいリンゴがまるごと1個入った、外側はしっとり、内側はシャリシャリの2つの食感を楽しめるバームクーヘンです。今回は、下町バームクーヘンを製造する株式会社乳糖製菓の代表取締役である益子英夫氏に、商品のこだわりや誕生秘話などを取材陣が詳しくうかがいました。
まるごと1個のリンゴがごろっと入ってる!東京下町で作る大人気のアップルクーヘン
2024/09/26
株式会社乳糖製菓 代表取締役の益子英夫氏
―御社の2代目でいらっしゃるとか?
益子 はい。弊社は、今から70年前に先代である父が創業しました。私は東京の錦糸町生まれで、物ごころついたときから工場でバームクーヘンが焼ける様子を見て育ちました。学校卒業後は、すぐには乳糖製菓に入社せず、一度他の会社でサラリーマンを経験し、その後アメリカで4年間勉強させてもらいました。弊社に入社したのは1991年です。
入社したばかりの頃は、弊社のバームクーヘンを海外展開して、どんどん売上を伸ばしたいと考えていました。しかし、すぐにその間違いに気づいたのです。海外展開どころか、これから立て直して利益を出していかなければ、会社を続けていくことができないという段階でした。
株式会社乳糖製菓(下町バームクーヘン)錦糸町本店。
―どんな対処をされたのですか?
益子 売上をもっと上げるためには、まずはバームクーヘンの味や食感をアップしなければならないと思いました。そこで、お菓子の専門家に来てもらい、その先生と一緒にバームクーヘンの改良に取り組みました。
当時、主流のバームクーヘンは、ふわふわして押したらスポンジみたいに戻ってくる生地だったのですが、弊社のバームクーヘンは余計な添加物を入れていないため、ずっしりとした重い生地でした。私は、もっとふわふわとしたバームクーヘンに改良しなければと思っていたのですが、4、5年くらい頑張ってみても、このようなバームクーヘンにはならなかったのです。ですが、味のほうはだいぶおいしくなりました。
―味は良くなったけれど、納得できるものではなかったのですね?
益子 そうです。ですが、今から思うと世間と同じような柔らかい生地がいいというのは私の思い込みでした。きっかけは、2000年頃にある女優さんが雑誌で語ったひと言でした。「私のおめざ」というようなページがあって、そこで弊社のバームクーヘンが「ずっしりとしておいしい」と言ってくださったのです。
「ああ、こういうのがいいと思ってくれる人もいるんだ」と、そのとき初めて気づきました。「ウチはもうふわふわではなくずっしりでいいんじゃないか、これからは自信を持ってこれでいこう」と吹っ切れたのです。今では、このしっかりとした生地が、他社とは違う弊社の強みになりました。
しっとり感があってずっしりと重い、乳糖製菓のバームクーヘン。
―ネット通販に乗り出したきっかけというのは?
益子 売り上げが伸び、東京の砂町銀座や新小岩、青砥などに店舗を出し、その次に大手のスーパーや駅の催事売り場などに次から次へと出店しました。
ところが、2011年の東日本大震災をきっかけに大打撃を受けたのです。人が帰りを急ぐ中、催事場での売上は全くダメになりました。さらに追い打ちをかけたのが新型コロナウイルスの流行です。このときも、店舗での売上がかなり落ち込んでしまいました。
バームクーヘンを専用の大型窯で焼く様子。
益子 そこで、実店舗がダメならばと、楽天・アマゾン・ヤフーショッピングなどのECモールで商品ページを作ることを思いつきました。おかげ様でECモールでの販売が当たり、今では卸よりもネット通販事業のほうが売上が高くなり、弊社はだいぶ息を吹き返しました。
―「りんごまるごとアップルクーヘン」を開発するきっかけは?
益子 この商品は、1980年代の後半に先代がアップルクーヘンを作る機械を購入したことがきっかけです。弊社のアップルクーヘンは、ふじりんごの丸ごと1個をシロップ漬けにして、その周りにバームクーヘンの生地を付けて焼き、丸く仕上げたものです。当時はバニラ風味のプレーン味でしたが、現在は改良し、アップル風味を効かせたプレーン味にしました。
シロップ漬けのリンゴまるまる1個を包むように焼き上げた、人気の「あっぷるくーへん」。
益子 りんごまるごとアップルクーヘンは、プレーン以外にもショコラ味とストロベリー味がありますので、お好きな味を選んでください。非常に完成度が高くておいしいお菓子ですので、一度は食べていただきたいです。
―御社の今後のご展望をお聞かせください。
益子 バームクーヘンはドイツ発祥のお菓子ですが、実はドイツへ行っても日本ほどメジャーには売っていません。日本ではどこのスーパーやコンビニでも必ず売っていますので、世界で一番バームクーヘンが発展しているのは日本ではないでしょうか。ですので、日本でバームクーヘンを売るというのは、とても大変なことだと思っています。
皆様がおいしいと喜んでくださるバームクーヘンをお届けするためには、商品開発が重要です。これからは、若い人の意見をもっと取り入れて時代に乗っていかなければ、売上を伸ばすことはできないでしょう。弊社で働いてくれる従業員さんたちのためにも後継者を育て、お客様に喜んでいただけるようなバームクーヘンを提供し続けていきたいと考えています。
―本日は大変有意義なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
「りんごまるごとアップルクーヘン」
種類:プレーン、ショコラ、ストロベリー
価格:¥1,620(税込)
店名:下町バームクーヘン 楽天市場店
電話:03-5637-7160(10:00~12:00/13:00~17:00)
定休日:土、日、祝日
インターネットでのご注文は24時間365日対応
商品URL:https://item.rakuten.co.jp/shitamachibaum/10000000
オンラインショップ:https://www.rakuten.co.jp/shitamachibaum
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
益子英夫(株式会社乳糖製菓 代表取締役)
1961年下町錦糸町の菓子屋の2代目として生まれる。大学卒業後、機械の専門商社に就職。その後、アメリカ西海岸のビジネススクールで学び、卒業後の1991年に乳糖製菓に入社。2001年社長に就任。同時期に実店舗展開を開始し、16店舗にまで成長。2013年から2015年にインドネシア進出を試みる(現在は撤退)。2013年からは、実店舗から楽天市場等のバーチャル店舗へとシフトを開始し、現在に至る。
<文/鶴良子 MC/白水斗馬 画像協力/乳糖製菓>