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脱酸素剤を入れないこだわりのお菓子。食べれば虜になる「クオーレ」と「焼き芋タルト」

2024/02/29

消費期限を延ばすため、お菓子のパッケージに入っている脱酸素剤。今回編集長アッキーが注目したのは、お菓子のおいしさを守るため脱酸素剤をあえて使わない「菓子工房T.YOKOGAWA」です。こちらのプラリネショコラサンド「クオーレ」と紅はるかのタルト「焼き芋タルト」は、ひと口めの芳醇な香りと味わいのグラデーションが魅力。数々のコンクールで賞を受賞されている有限会社菓子工房ティ.ヨコガワの代表取締役社長、横川哲也氏に取材陣がお話を伺いました。

有限会社菓子工房ティ・ヨコガワ 代表取締役社長 横川哲也氏
有限会社菓子工房ティ.ヨコガワ 代表取締役社長 横川哲也氏

―横川社長がパティシエになられた経緯を教えてください。

横川 私が高校卒業後の進路を探していた昭和50年代は、飲食の仕事がしたければまず飲食店に勤めるのが一般的でした。そして最初に働いた洋菓子店で、現在兵庫・西宮で「ケーキハウス ツマガリ」を経営されている津曲 孝氏と出会ったのです。

津曲氏が「ケーキハウス ツマガリ」立ち上げのため独立されるときに私もご一緒し、5年間働きました。そのなかで、がむしゃらにお菓子の勉強をしなければこの世界で生き残ることはできないという気付きをいただき、ひたすら勉強をし続けて現在に至ります。

―ご自身のお店を持たれることは当初からの目標でしたか?

横川 その目標はうっすらとありました。ただ、その後東京・成城のアルプス洋菓子店に勤めながら、独立よりも「技術者としてどう生きるか」の方が重要になってきました。コンクールに挑戦したり、テレビ番組に出演したりしたことも影響していると思います。

しかしその後関西に戻ると、私の師匠からの紹介で新規オープンのお店の製菓長を任されることになったのです。私は基本的に、自分が認める方からの要望には「はい」とお答えすることにしています。お答えした以上、引き受けたことを具現化するためにどう働くか、資金面の問題などもありましたが「やるしかない」という気持ちでした。

―現在の「菓子工房T.YOKOGAWA」は2000年オープンとのことですが、創業からの歩みをお聞かせください。

横川 お店が成長するに伴う問題を解決してきたら、今日に至るというのが歩みです。スタッフが増えれば働くスペースが足りなくなりますし、給与を払うため売り上げも伸ばす必要があります。お客様が増えれば駐車場が足りなくなります。最初から大きなお店にしようというつもりはなく、お店とスタッフの環境を良くするため、目の前の問題を解決してきた結果が現在です。

これはお菓子作りにも通じることで、あるお菓子を作ってお客様の評価をいただき、ご意見があれば改善する。それを続けていって今日がある、そういう世界だと思います。

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ガラス張りの空間に明るい光が差し込む「菓子工房T.YOKOGAWA和泉中央本店」。

―社長が創業当時から大切にされているお菓子への思いは?

横川 弊社のお菓子はごく一部を除き脱酸素剤が入っていないので、日持ちが長くありません。水分量が多く糖分の低いバームクーヘンにだけは入れますが、それ以外のお菓子には脱酸素剤を入れず、1週間や10日の期限で食べていただく。効率は悪いけれど、それが私の一番こだわり続けているところです。

カビ防止に防腐剤や脱酸素剤を入れることを否定はしませんが、カビが生えないのは、生えるだけの酸素や水分や栄養分がないからでしょう。そういったお菓子が本当においしいかは疑問だと思います。

―脱酸素剤は味わいへの影響が大きいのですか?

横川 そうです。巷でおいしいと言われるお菓子でも、脱酸素剤の入ったものはファーストインパクトに乏しいのです。香りの含まれている空気を抜いてしまっているので、香りがしないお菓子が多い。そういったファーストインパクトを大事にしたいという思いはずっと持っています。

健康に関わることですから、お菓子にカビが生えるのはもちろん良くありません。だからといって脱酸素剤を入れてカビを防ぐ方法は取りたくない。その思いを理解してもらおうと努めていますし、ご購入後の保管方法なども丁寧に説明する。これを開業以来24年間続けています。

―お客様からの信頼を得られるような、安定したおいしさを出す方法を教えてください。

横川 おいしさのバラつきは、どうしても多少は出るものです。たとえば自分で試作したお菓子が95~100点だったとしても、生産する現場の環境に落とし込めば、その点数を出し続けることは難しくなります。

そこで、こだわる上限のラインを決め、そのお菓子を80~85点で生産できる環境を作って落とし込んでいきます。その点数の幅を保っていれば、お客様からは「いつもおいしい」と思っていただけるでしょう。その幅を目指せるよう、原材料の選び方や配合などにこだわり安定感を出しています。

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横川氏は「西日本洋菓子コンクール」「全日本洋菓子コンクール」等、数々の賞を受賞。

―「西日本洋菓子コンクール」など数々の賞を受賞し、テレビへのご出演もされていますが、ターニングポイントになる出来事はありましたか?

横川 ターニングポイントはやはり「TVチャンピオン(テレビ東京)」への出演です。宣伝広告費に換算すれば、数億円分ではと思うほど認知度が上がりました。しかし、インパクトが強すぎて30年経っても「TVチャンピオン」のイメージが付いたままという面もあります(笑)

「TVチャンピオン」も含めコンクールとは、物事をポジティブに捉え、目の前の困難をいかに解決するかの練習になる世界です。たとえば1時間20分かかる作品を制限時間1時間で作る場合、そのための手法や道具作りに知恵を絞る必要があります。そういう訓練を重ねると、商売でトラブルがあっても「どう解決するか」へ瞬時に頭が回るようになるのです。そういった面で、コンクールは非常に良い経験になりました。

―今回ご紹介する「クオーレ」は2018年開発とのことですが、きっかけとなったエピソードをお聞かせください。

横川 「クオーレ」の開発前、世間ではガナッシュを挟んだチョコレートサンドが流行っていました。そういったお菓子を自分なりに表現するには、とイメージを重ねていたところ、たまたまスタッフがヘーゼルナッツとアーモンドのペーストを作っており、それを見た瞬間にひらめいたのです。

さっそくジャンドゥーヤ(※ナッツとチョコレートのペースト)をブレンドしてセンターを作り、上下をクッキーで挟んでテスト的に販売したところ好評でした。最初はすべて手作業で作っていたので大変でしたが、評判が良かったので量産できる工夫を重ね、現在では必要数を安定して生産できるようになっています。

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風味豊かなプラリネショコラをクッキーに挟んだ「クオーレ」。

―「クオーレ」の甘すぎない、年代を問わず愛される味は社長の目指されたものですか?

横川 私としては砂糖をしっかり使っているのですが、「甘すぎない」と評価をいただくのは口どけが良いからかもしれません。チョコレートが口の中で溶けるのが遅れ、油脂分がしつこく残るようなお菓子は「甘すぎる」と感じるのではないでしょうか。

加えて私が大切にしているのは、お菓子を食べたとき最初に何の味が来て、最後は何の味で終わるかというグラデーションです。「クオーレ」であれば、クッキーのサクッとした食感からナッティな風味とチョコレートの味を感じ、最後に残ったクッキーが油脂分を流し落とすようなイメージで作っています。

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ヘーゼルナッツとアーモンドの風味、チョコレートの味わいなどが計算されたグラデーションを生み出す。

―もう一つのお菓子、秋冬限定「焼き芋タルト」開発のきっかけを教えてください。

横川 知り合いに誘われて鹿児島に行ったとき、八百屋さんに「紅はるか」が並んでいるのを見て、食べたことがなかったので20kgほど送ってもらったのです。その頃流行っていた芋は「安納芋」だったのですが、これは温度に敏感でおいしさを保ちにくく、商品化するには難しい芋でした。そこで「紅はるか」を使ってみたところ、ギフトにできるクオリティのスイートポテトタルトができ「焼き芋タルト」の販売につながりました。

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甘い「紅はるか」のペーストをたっぷり使用した「焼き芋タルト」。

―スイートポテトを超えたおいしさと評される「焼き芋タルト」ですが、特にこだわっているポイントは?

横川 本来スイートポテトは芋のペーストだけで作るのですが、タルト型のサイズが大きかったので、下にアーモンドクリームを絞って2層にしました。それにより、芋のインパクトから入ってアーモンドの香りにグラデーションしていく、普通のスイートポテトとは違うおいしさが出たと思います。また、芋のペーストをなめらかにし過ぎず繊維質を残すことで、芋の持ち味が豊かな味わいになっています。

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タルト生地にアーモンドクリームと「紅はるか」のペーストを乗せて焼き上げる。

―最後に、今後の展望についてお聞かせください。

横川 これまでと同じく、目の前に起こる問題を解決していきつつ、今の規模でお客様にご満足いただける環境を作っていきます。これ以上規模を大きくするなら、今の「脱酸素剤を入れない」「作り溜めしない」などのスタンスを変え、変えた中でどう自分らしさを表現するか考える必要があるでしょう。

それをせず今の規模で続けたいとは思いますが、昨今は特に何が起こるかわからない世の中ですから、起こる変化に対応できる生き方をしていきたいです。

―本日は素晴らしいお話をありがとうございました。

「クオーレ」(6枚入)

「クオーレ」(6枚入)
価格:¥1,566(税込)
店名:菓子工房ティ・ヨコガワ
電話:0725-57-2888(和泉中央本店)(9:00~19:00 月曜定休)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://t-yokogawa.com/products/detail/10405
オンラインショップ:https://t-yokogawa.com/

「焼き芋タルト」(5個)

「焼き芋タルト」(5個)
価格:¥1,512(税込)
店名:菓子工房ティ・ヨコガワ
電話:0725-57-2888(和泉中央本店)(9:00~19:00 月曜定休)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://t-yokogawa.com/products/detail/10636
オンラインショップ:https://t-yokogawa.com/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
横川哲也(有限会社菓子工房ティ.ヨコガワ 代表取締役社長)

1964年大阪府生まれ。専門学校中退後、西宮「ケーキハウス ツマガリ」、成城「アルプス洋菓子店」、堺「花とお菓子の工房 フランシーズ」を経て、2000年和泉市に「菓子工房T.YOKOGAWA」をオープン。地域で愛される南大阪1番店を目指し日々邁進中。

<文・撮影/ふるとりあやめ MC/伊藤マヤ 画像協力/ティ.ヨコガワ>

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