鶏肉一筋75年。和歌山で“鮮度”と“手捌き”にこだわった鶏肉を扱う「株式会社鳥栄」がこのほど、地元の料理店とタッグを組んで、ほかでは味わえない“地鶏鍋”の販売をはじめました。その名も「地鶏のアラビアータ鍋」。編集長アッキーも注目するその商品の誕生秘話や鶏肉にかける思いを、代表取締役の佐武史朗氏にうかがいました。
地鶏鍋×イタリアン!鮮度と手捌きにこだわる老舗鶏肉店とイタリア料理店のコラボで生まれた「地鶏のアラビアータ鍋」
2023/07/18
株式会社鳥栄 代表取締役の佐武史朗氏
ー御社の沿革をお聞かせください。
佐武 1948年に先々代が創業しました。当初は鶏を絞めて捌いて販売することを生業とするシンプルなものでしたが、のちに先代が「鳥栄商店」を設立。小売店として主に一般向けに鶏肉や加工品を販売していました。私の代になってからは飲食店や精肉店、商社への卸売業が主軸となりました。一時期、小売りをやめてしまったこともあるのですが、近隣のお客さまの声を受け、今は自社工場併設の屋台でやきとりや唐揚げなども販売しています。露店のような形なので陳列はできませんが、お声がけいただければ捌きたての鶏肉もお譲りしています。
ー最も大切にしていることは?
佐武 やっぱり鶏肉を実際に口にする消費者さんのことを第一に考えています。たとえば解体なら、鮮度のよい鶏肉を人の手で捌き、小さな骨や筋を取り除いて、どなたにも安心して食べてもらえる状態にすること。加工も配送も、すべてにおいて常に消費者の方々をイメージして仕事に臨むよう現場の従業員にも口を酸っぱくして伝えています。
新鮮な鶏肉を一羽一羽手捌きで。そのおいしさを求めて工場のインターホンを鳴らす地元の人も少なくない。
ー鶏肉は100%人の手で捌いておられるとか。
佐武 創業以来、ずっと手捌きです。大手さんの鶏肉はオートメーション化が進んでいて、大部分の工程を機械でこなすことが多くなっています。でも鶏肉は、人間と一緒で個体によって姿形が違うんですよ。サイズが同じでも足が短かったりとか、関節が曲がっていたりとか。そういう個体差は機械では判別できませんから、一羽一羽の状態に即して細やかな解体作業ができるということは手で捌くことの大きな利点だと思います。パッと見た感じはきれいでも中に小骨がついている部分とか、食感が悪いところを選別して取り除けるのも、毎日お肉に触れる職人だからこそできることです。
地元のイタリア料理店とコラボした「地鶏のアラビアータ鍋」。
アラビアータソースを具材に少しずつのせて味の変化を楽しんだり、
お椀の中でスープに溶かして好みのバランスに調整したりして自由に味わえる。
ー「地鶏のアラビアータ鍋」を開発されたきっかけは?
佐武 通信販売用のオリジナル商品としてはこれが第一弾となるのですが、以前からネット通販には魅力を感じていて。そんな中、コロナ禍で飲食店への卸売が停滞して時間ができたということもあり、全国各地の消費者さんに直接お届けできる商品を考えはじめました。ただお肉をお届けするだけじゃなくて、うちでないとできないものは何だろうと。
その頃、以前からお付き合いのあったイタリア料理店「クチーナ アビッソ」さんもだんだん苦しい状況になってきていて、店内飲食以外で何かできることはないかと考えておられました。うちとしても何か力になれないかと考えてご提案したのが今回のコラボでした。アビッソさんとは10年ほどお付き合いがあって、忌憚なく意見を言い合える間柄でしたので、妥協することなく本当に良いと思える商品を開発することができました。
冷凍宅配便で到着する箱を開けると、水引きをイメージしてデザインされたパンフレットが。
地鶏やスープ、ソースは2人前ずつパッキングされている。
ー“地鶏鍋×アラビアータ”というのが新鮮ですね。
佐武 ほかにはない商品だと思います。アラビアータソースを柚子胡椒のように薬味感覚で鍋とあわせるスタイルなのですが、コラボの話が持ち上がる前にアビッソさんが考案されていたものなんです。商品開発を進めるにあたって試食させてもらったときに、これは面白いと。ぜひこれで行きましょうと、即決しました。トマトの爽やかさと唐辛子の辛味がクセになる切れ味よいソースが、主張しすぎず、いい塩梅で地鶏やほかの具材の味を引き立ててくれます。
ー使用されている「丹波黒どり」とは、どんな地鶏なんですか?
佐武 丹波黒どりは肉質が本当にきめ細やかで、よく“シルキー”と表現されるんですけれど、歯ざわりもすごく良いです。地鶏って歯ごたえがしっかりとしている分、火を入れすぎると硬くなりやすいのですが、この丹波黒どりは保水性が高いのでやわらかさとプリッとした弾力を兼ね備えています。脂もクリアで上品なので、ソテーしてソースをかけたり、煮込み料理にしたりなど、食材に味を重ねていく洋食によく合う銘柄です。
手捌き・手切りの丹波黒どりは真空パックして凍結加工。処理したてのおいしさが楽しめる。
ースープへのこだわりは?
佐武 ベースは丹波黒どりの鶏だしスープです。アビッソさんがお店で大切にされているのが、“余計なことをしない”、“余計なものを入れない”ことなので、スープもソースもレシピは極力シンプルにしていて。添加物も必要最低限にとどめているので、製造をお願いしている工場の方はかなり苦労されたと思います。結果的にスープは無添加でできましたので、鶏ガラと香味野菜、ほんの少しの塩と胡椒だけを使った身体にやさしいレシピで作っています。
地鶏や野菜がたっぷり摂れてスタミナ満点!
地鶏と香味野菜の旨みを引き出した繊細な鶏だしスープと爽やかなアラビアータソースは夏場にもぴったり。
ーおすすめの具材はありますか?
佐武 普段お鍋に使わない食材とよく合うのがこの商品の面白さの1つなので、ぜひ騙されたと思ってレンコンやカボチャ、ブロッコリーなどを入れてみてください。オクラやナスといった夏野菜も合いますし、魚や貝類を入れると魚介の旨みも加わってまた違ったおいしさが楽しめます。
商品の企画を担当した佐武秀樹氏おすすめの〆はパスタ。
「スープをちょっと煮詰めて、チーズとペッパー、お好みでアラビアータソースも加えて食べるとすごくおいしいですよ」
ー最後に今後の展望をお聞かせください。
佐武 自社の完全オリジナル商品もですが、日頃お世話になっているお客さまと一緒に企画開発したり、一般消費者さんの声を反映した商品づくりを行ったりなど、新たな試みにどんどんチャレンジして、もっといろんな方に商品を届けていきたいです。国内のみならず海外ですとか、あるいは宇宙とか。そんなふうに事業の幅を拡げられると面白いなと思いますね。
ー本日は素敵なお話をありがとうございました!
「地鶏のアラビアータ鍋」(2人前×2セット)
価格:¥4,320(税込)
店名:和歌山の老舗鶏肉屋 トリエイショップ
電話:073-424-5726
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://toriei.base.shop/items/69176272
オンラインショップ:https://toriei.base.shop/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
佐武史朗(株式会社鳥栄 代表取締役)
1961年和歌山県生まれ。高校時代は野球に打ち込み、その活躍を見込まれ佐川急便に野球部員として就職。その後、結婚を機に鳥栄商店に入社し、紆余曲折を経て30代半ばで社長に就任。2011年に法人化し、株式会社鳥栄を率いて県外の商社との取引を中心に事業拡大を続けている。今後は国外、果ては地球外(宇宙日本食など)取引を目指している。近年は4人の孫たちが生きがい。
<文・撮影/野村枝里奈 MC/吉田茉代 画像協力/鳥栄>