今回、編集長のアッキーが注目したのは、五色株式会社(東京・浅草橋)が作る可愛らしい雛人形と五月人形。現代の家庭事情に合わせたコンパクトなサイズにもかかわらず、技術の高さがうかがえるかなり本格的なものです。そこで、どのような想いで節句人形を作られているのかを、三世継承の人形師である原裕子氏に伺いました!
百年の継承技術に注目!三世人形師がこだわる「親の愛が伝わる節句人形」とは?
2024/02/26
五色株式会社 三世人形師の原裕子氏
―どのような経緯で人形師になられたのですか?
原 祖父が初代の人形師で母が二世を継承しましたので、私は幼少の頃から人形作りを見てきましたが、特に職人になりたいとは思っていませんでした。ただ、もともと美術や芸術が好きだということもあって、大学は美術系の大学を選択したのです。そして、大学卒業後は美術、インテリア、ファッションなどを学びに、イギリスへの留学も経験しました。本格的に人形作家を目指そうと思ったのは、イギリスに留学していたときの友人のある一言がきっかけです。
―友人の一言で人生が変わったということですか?
原 はい。海外に行くと、いろいろな人が日本の人形師という仕事について興味を持って質問してきます。そこで、「こんなにもたくさんの人が興味を持ってくれる職業なんだな」と初めて気づかされました。日本を説明していく中で、日本の伝統文化の大切さを身に染みて感じることができたのは貴重な経験でした。ですが、このときはまだ自分がこの先何を志して、何を職業として選んで行けばいいのか、という迷いがありました。
そんなときに友人がふと、「迷いがあるのは家の仕事がステキ過ぎるから。家の仕事よりも、他の仕事のほうが勝るということがないからじゃないの?」と言ってくれて、「あーそうだったのか!」と。今までモヤモヤしていたものが、スッと落ちたような感じになりました。そのような経緯で、イギリスから帰国後はすぐに入社し、母の手伝いをすることからスタートしました。
人形の顔を一つ一つ丁寧に筆で描く様子。
―今回ご紹介いただける「ふくさ雛」の商品開発のエピソードなどはありますか?
原 ふくさ雛は、とっても小さなお人形で、手の平にスッポリと入ってしまうような大きさです。特にこだわった点を申しますと、お顔は赤ちゃんみたいな可愛らしさがあり、さらに仏像のような清らかさがあるような感じにしました。
その他にもお姫様の衣裳の合わせの部分ですとか、後ろ姿の衣装にほんの少しの揺らぎみたいなものとか、着物の柔らかなラインが出るようにと、かなりこだわりました。
五色おすすめの雛人形(ふくさ雛 No.24-212)。
―五月人形のほうはいかがですか?
原 こちらの五月人形は、本当に小さくて。兜を被ったり、兜と一緒にお飾りしたりするタイプの大将飾りというものは、どうしても少し大きくなってしまいますが、こちらは小さくても細部までこだわって作りました。
お人形には立派な陣羽織を着せています。陣羽織の襟をちょっと立たせたりとか、フチにも目立つように赤い線を入れたりとか。見た目はただの黒い無地の衣装に見えますが、実は布自体も繊細な織柄の入ったものを選んでいます。実際に近くでご覧になったら「おお!」と、凝っていることに気づいていただけるかと。そういう細かい部分にかなりこだわっています。
五色おすすめの五月人形(豆大将 No.24-146)。
―五月人形をどのような人に手に取って欲しいですか?
原 古来、日本では赤ちゃんが誕生したときに、「赤ちゃんの病気や厄をお人形に代わりに受け取ってもらう」という意味を込めて、お守りのような形でお人形を飾るという習慣があります。五月人形というのは武士の世界になってからのお人形で、跡継ぎの男の子が産まれたことへの喜びや、強く健やかに赤ちゃんが育って欲しいという願いから、武士の人形を飾るようになったそうです。
つまり、五月人形というのは、ご両親が産まれてきた赤ちゃんに対してどれだけ大切で、どれだけ健やかに育って欲しいのかという願いが形になったものですので、ぜひ、そういう願いを込めてお人形を手に取っていただけたらと思っています。
―お人形を制作するにあたって、大切にしていることはありますか?
原 弊社の指針といたしまして、「愛を伝えるお手伝いをする」というのがあります。これは、お人形を制作するときや販売するときに必ず大切にしていることです。赤ちゃんが成長して物心がついてから、毎年お節句のたびに飾られるお人形を見たときに、「ああ、自分が家族から愛されているんだな」と感じてくださると嬉しいです。
日本の伝統文化には五節句というものがあり、その中でも桃の節句や端午の節句は子どもに直接関わりのある大切な行事になっています。昔はこの節句を通じて、季節折々の作法やしつけなどを子どもに教え、それと共に親御さんの気持ちや愛情を伝えていたのではないかと。親からたくさんの愛情を受けて育った子どもは、とても自己肯定感が育まれます。その自己肯定感は、子どもがこれから大きくなって人生を歩んでいく上での大きなエネルギーになるはずです。私たちは、そういったお子様の成長のお手伝いをしたいと思いながら日々仕事をしています。
代々受け継がれる膨大なデータ。
―最後に、今後のビジョンや展望などをお聞かせいただけますか?
原 現代は少子化ですので、年々赤ちゃんの数が少なくなっています。その代わりとして、産まれてくる赤ちゃんを大切にするという想いは以前よりも増しているのではないかと。そのような想いで選びたいと思っている方に、私どもの作るお人形をぜひじっくりと選んでいただきたいです。
赤ちゃんが産まれてお人形を飾るという日本の文化は素晴らしいと思いますし、それを少しでも世界の皆さんに知っていただけたらなとも思っています。
浅草橋本店のようす。
―本日は貴重なお話をお聞かせ頂き、ありがとうございました。
「ふくさ雛 No.24-212」
サイズ:
(セット)横幅32×奥行17×高さ15cm
(お殿様寸法)横幅8×奥行8×高さ13cm
(お姫様寸法)横幅9×奥行9×高さ8cm
価格:¥180,000(税込)
店名:五色 本店
電話:0120-357-635(受付時間 9:30~18:00)
定休日:年末年始
インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://hara-koushu.com/products/24-212?_pos=1&_sid=818bd3b15&_ss=r
オンラインショップ:https://hara-koushu.com/
「豆大将 No.24-146」
サイズ:
(セット)横幅19×奥行15×高さ15cm
(お人形寸法)横幅8×奥行8×高さ14cm
価格:¥85,000(税込)
店名:五色 本店
電話:0120-357-635(受付時間 9:30~18:00)
定休日:年末年始
インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://hara-koushu.com/products/24-146
オンラインショップ:https://hara-koushu.com/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
原裕子(五色株式会社 三世人形師)
1975年東京生まれ。幼少より祖父である初代原米洲から直接、人形制作の手ほどきを受ける。女子美術大学卒業後イギリスへ留学し、美術、インテリア、ファッションを学び、帰国後は五色株式会社に入社。母である原孝洲のもとで人形師としての修行を再開し、2018年に三世を襲名。人形制作と同時に日本文化の素晴らしさを国内外に広める活動も行っている。
<文/鶴良子 MC/矢口優衣 画像協力/五色>