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国産小麦粉と塩だけで作る伝統の名古屋名物。吉田麺業の「きしめん」

2024/03/25

名古屋名物、きしめん。無添加、手打ちの喉ごしにこだわって、手間暇かけたきしめんを作り続ける老舗があります。今回編集長アッキ―こと坂口明子が気になった吉田麺業有限会社 代表取締役の吉田孝則氏に、取材陣が伺いました。

吉田麺業有限会社 代表取締役 吉田孝則氏
吉田麺業有限会社 代表取締役の吉田孝則氏

―1890(明治23)年創業のころのお話を聞かせてください。

吉田 現在も本社を置く名古屋市中川区に、私の曾祖父が創業しました。名古屋の中でも田舎の地域で、多くは農家だったようです。私が子どもの頃でも冬は、池に分厚い氷が張って雪が積もることもしょっちゅうある寒さでしたから、明治のころはもっと寒かったと思うんですよ。農家としては、秋に収穫を終えてしまうと、そんな寒さの中、春まで外仕事ができなくて、屋内で麺を作ろうと思い立ったんでしょう。

そうはいっても、小麦粉が簡単に買えるわけでも、電気があるわけでもない時代ですから、石臼で小麦を挽いて、その粉を麺にしていたと思います。私の憶測ですが、三重県あたりでそうめんを作っていたところで学んだんじゃないでしょうか。代々受け継がれてきた製麺に、手延べそうめんの製法も入っていますから。私の祖母が創業者の息子に嫁いできたころ、馬が2頭、ぐるぐると回りながら石臼を挽いておったと聞いたことがあります。

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前田利家生誕の地である中川区荒子に創業。

―最初からきしめん製造を?

吉田 おそらく、そうめんやうどんのようなものを作っていたと思います。それから、名古屋ではきしめんが生まれたんですね。きしめんの誕生には諸説ありますが、私が思うに、平たくすることでゆで時間が短くなる効率を考えたんじゃないか、と。そうしてうちでもきしめんを打つようになったと思います。

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ひらひらとした形状で独特の食感が特徴の名古屋名物、きしめん。

―社長のご就任が1959(昭和34)年。

吉田 第二次世界大戦で、一時休業に追い込まれました。工場も全焼しましたし、終戦後しばらくは材料が手に入りませんでした。終戦3、4年後でしょうか。焼け野原にバラックを建ててまた麺作ろうと祖父が再開したのは。政府の統制下で小麦が十分に買えない、作った麺を自由に売れない、そんな数年を経て、1956(昭和31)年ごろ、正式に製麺業を再開できました。

当時は、名古屋のいたるところに商店街や市場があって、麺料理を出すお店も多かったんです。うちは200軒くらいですかね、そういうところにお願いをしていました。

私が就任したころから数十年は食糧難で、作れば売れる時代が長く続きました。そんな中でも、おいしいものを作らなあかんという気持ちは常にありましたね。喉ごしがよく、食べやすい柔らかさがありながらもモチモチ感のある、そんな麺を作ろうと心がけてきました。

―どのような努力を?

吉田 まず原料の小麦ですね。昭和30~40年代、国産小麦の質は今ほど良くなかったんです。米は古来日本でとれるものなので、国産米がおいしいですよね。小麦もそうだと思っていましたが、当時は国産より輸入小麦の品質の方が良かった。小麦を作れば政府が全部買い上げてくれる時代がずっと続きましてね、ただ作ればいいという風潮だったのでしょう。当時はオーストラリアを中心とした海外から輸入した小麦で製粉した粉を使っていました。

政府による買い上げ制度が終わっていいものを作らんと買っていただけない時代になり、国産小麦の品質はぐっと上がりました。現在、国内に出回る小麦の8割は輸入品ですが、各県いろいろ農業試験場で品種改良が進みました。愛知ではきぬあかりという銘柄があり、これがなかなか高品質。現在、うちではきぬあかりと北海道のきたほなみを中心に、国産小麦を使っています。

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時代ごとにおいしい小麦粉を厳選し、明治から続く伝統の味を継承。

―そのほかのこだわりは?

吉田 添加物を入れないこと。小麦粉と塩だけで打っています。添加物を入れると、何かちょっと、麺の雰囲気とでもいいましょうか、風味や喉ごしがちょっと違ってくる気がしますので、私どもは昔から入れません。

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驚くほど喉ごしが良く、柔らかくもしっかりコシがあり、
うどんともそうめんとも違うきしめん独特のおいしさが堪能できるよしだ麺。

保存料を使えば、もう少し日持ちがしたり、簡単に喉ごし良くコシのある麺ができたりするのでしょうが、小麦本来の香りや性質を最大限に生かすことを大事にしています。水や塩の量、こね方や寝かす時間などに工夫をして、非常に手間や時間がかかりますが、手打ちの味を守っています。ある程度値段も上がってしまいますが、理解してくださるお客様が買ってくださっていますね。

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原材料は小麦粉と塩のみという潔さ。添加物でなく技術で麺のクオリティをキープ。

―どのようなところで販売を?

吉田 昔は商店街のお店に商品を置いてもらったり使ってもらったりしていましたが、スーパーができて個人商店がなくなっちゃいました。そのころ、高速道路ができまして、引き合いが来るようになったんです。うちの商品は、スーパーに置いてもらえるような値段じゃないものですから、ずっとお願いをしている飛行場や名古屋駅に加えて、サービスエリアや道の駅で土産物として置いていただいています。

土産に買ったりもらったりしてうちの麺を食べられた方が、おいしかったからと、お中元やお歳暮に使おうとか、手土産にしようなどと、通販で買ってくださって、何とか商売をさせていただいているというのが現在の状況です。

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乾燥きしめんは通常タイプに加えて細と幅広がある。

―飲食店も手掛けていらっしゃいますね。

吉田 本社のある中川区荒子は名古屋駅に近いですし、地方のお客様にもおいしいきしめんを食べていただきたいと常々思っていました。新幹線口の地下街ができるということで、声がかかり店を出し、かれこれ50年以上になります。名古屋駅に直結した百貨店にも、1974年の開店から2010年の営業終了まで店を出しておりました。現在は名古屋駅地下街の店に加えて中川区内2店舗の路面店があります。

―半生きしめんの話も聞かせてください。

吉田 今でこそ半生麺はたくさんありますが、当時、麺と言えば乾麺か生麺しかありませんでした。土産物として乾麺を販売するようになり、もう少し気楽に食べていただけないかと工夫したものです。乾燥したものだとどうしてもゆで時間がかかるものですから、ちょっと水分の残った状態にしてみようと始めました。

どこまで乾燥させようか、どんな状態で商品にしようか、いろいろ試して、失敗もたくさんしました。試行錯誤を繰り返してようやく、乾き具合や袋のデザインが決まって、うまくいくようになりました。すると、乾麺よりおいしく、生麺ともひと味違う食感や風味を楽しめる商品となりました。

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ある程度の日持ちとゆで時間の短縮を両立させた半生きしめん。
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半生きしめんは、幅広タイプと塩を控えて硬めに仕上げたみそ煮込み用がある。
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みそ煮込みきしめんは、
別売りのつゆ「味みそ」(10袋入¥450 税込)で作ると
本格的な名古屋の味が楽しめる。

―おいしい食べ方を教えてください。

吉田 小麦粉を塩水でこねることでコシのあるきしめんになります。ゆでるときにその塩を抜くために、たっぷりの湯でゆでてください。そこだけ気をつけて塩を抜いていただくと、おいしい麺になります。

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1袋2人前あたり4リットルを目安にたっぷりの湯をわかし、
きしめんをパラパラと入れて箸で軽くさばき、強火で3~4分沸騰させる。
麺が浮く状態の中火にして、菜箸などで浮かせて蓋をして、
乾麺は10分程度、半生麺は6~8分ゆで、冷水に取ってよく冷やす。
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おいしいきしめんになるか否かはゆで方次第。失敗しないようわかりやすく解説されている。

吉田 名古屋で一番オーソドックスなのは、油揚げを入れて花鰹をかける食べ方ということになっていますね。天ぷらを乗せるのも人気です。私は個人的に、麺の味を最も感じられるのは、ざるで冷たい状態だと思っています。温かくすると、コシの状態が変わりますからね。

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麺の喉ごしやコシを堪能するにはざるがおすすめ。
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油揚げ、青菜、ねぎに、本来は花鰹をトッピングするのがオーソドックス。
鰹を始め、ムロアジやサバのだしのきいた麺つゆ(10袋入り¥400 税込)もある。

―きしめんへの想いをお聞かせください。

吉田 添加物を使わない安心と、柔らかい喉ごしやモチモチの食感といった、手打ちにも劣らないおいしさ……この2点をとことん追求してきました。最近は、便利に使っていただけるよう、ゆでた麺の冷凍商品の開発も進めています。名古屋名物ではありますが、きしめんのおいしさをより多くの方に伝え、後世まで残していくために、これからも精進してまいります。

―素晴らしいお話をありがとうございました!

「半生きしめん」

「半生きしめん」
価格:¥1,420(6袋入り・税込)
店名:名古屋名物、名古屋のきしめんと言えば、きしめんよしだ【吉田麺業】通販サイト
電話:0120-77-2875(9:00~18:00 日曜祝日除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://shopping.yoshidamen.co.jp/products/detail/162
オンラインショップ:https://yoshidamen.co.jp/

「乾きしめん」

「乾きしめん」
価格:¥1,420(6袋入り・税込)
店名:名古屋名物、名古屋のきしめんと言えば、きしめんよしだ【吉田麺業】通販サイト
電話:0120-77-2875(9:00~18:00 日曜祝日除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://shopping.yoshidamen.co.jp/products/detail/12
オンラインショップ:https://yoshidamen.co.jp/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
吉田孝則(吉田麺業有限会社 代表取締役)

1931年生まれ。旧制中川中学(現・愛知県立松蔭高校)卒業。1959年、吉田麺業有限会社・代表取締役4代目に就任。1979年、業界初となる半生麺製造を開始し、現在に至る。

<文・撮影/植松由紀子 MC/三好彩子 画像協力/吉田麺業>

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