ウィスキーのように美しい琥珀色をした焼酎、「樽焼酎」をご存知でしょうか。
焼酎といえば無色透明、日々の晩酌にしたり水や炭酸で割って飲んだりすることも多く、安価でカジュアルなイメージのお酒ですが、その焼酎を樽で寝かせ、ウィスキーのような樽色と、バニラのような風味をまとわせたスペシャルな本格焼酎が「樽焼酎」です。
今回、アッキーこと坂口明子編集長は、この「樽焼酎」に注目。熊本県で約4,000種類もの酒類を小売販売する有限会社アカツキ商店にて「樽焼酎」にほれ込み、世界初の樽焼酎専門サイトまで立ち上げて発信を続ける、取締役の郡司佳明氏の思いを取材陣が伺いました。
ウィスキーの本場で高評価!芳醇な樽香とほのかな甘みがプレミアムな樽焼酎(リキュール)「THE・RIVER(ザ・リバー)」
2024/11/21
有限会社アカツキ商店 取締役の郡司佳明氏
―まずは有限会社アカツキ商店ご入社の経緯からお聞かせください。
郡司 もともとは家電メーカーの営業マンをしておりました。妻の実家が熊本県にあるアカツキ商店ということで、転職したんです。いわゆるマスオさん状態といいますか(笑)。
生まれは九州の宮崎県で、関東にある学校に入ってそのまま東京で家電メーカーに就職したところ、熊本支店に配属になったんです。その支店にいたのが妻で、結婚してからも数年は勤め続けていたのですが、30歳を過ぎたくらいに転勤の話が出まして…。いろいろ考えた結果メーカーは退職し、妻の地元でお酒の販売をやってみようかなという思いに至り、お世話になることにしました。2001年のことです。
―かなり分野が違うと思うのですが、いかがでしたか。
郡司 メーカーでは家電量販店やスーパーの家電売り場などを担当して商品を卸す仕事をしており、小売業の動きだとか仕組みなんかは少しかじっていましたから、それほど違和感はありませんでした。
実際、BtoB(企業間取引)よりも、最終目的地に向けて商品を販売する、つまり手に取るお客さまの顔が直接見える、というところでは、かえってやりがいを感じることも多く、面白い仕事だなと思っています。アカツキ商店自体が、お客さまが熊本に居ながらにして世界のお酒に触れられる場所となり、お酒で熊本と世界をつなぐお手伝いをする、というコンセプトをもつ会社というのも大きいかもしれません。
「分かりやすく楽しく自分で」お気に入りの一本を見つけられるよう、
広い店舗の至る所に工夫があり、スタッフによる案内も手厚いと評判のアカツキ商店。
―もともとお酒はお好きだったのですか?
郡司 ウィスキーがすごく好きでした。特に銘柄にこだわりというのはなかったですが、若い頃は角瓶とか、少しお金があったらリザーブを買ったりとかしてですね、飲んでいました。成人したとき関東にいたので、九州出身ですけど焼酎って正直あんまり飲んだことはなかったんです。
―焼酎とは縁遠いなか、樽焼酎との出会いがあったということですか?
郡司 まあ、とはいえ宮崎県でも熊本県でも、もちろん周りの大人たちは焼酎ばっかり飲んでいますから(笑)。熊本県に来たら、みんな米の球磨(くま)焼酎というやつを飲んでいるので、つられて一緒に飲み始めてはいました。でも焼酎にもさまざまな種類があるんだな、ということを知って興味がわいたのは、アカツキ商店に入ってからです。
アカツキ商店ではとにかくワインから日本酒からウィスキーから、世界中の膨大な数のお酒を扱っていますから、入社したらまずお酒全般についていろいろと勉強しまくりました。ワインソムリエの資格を取ったり、お客さまにご案内するためにチーズプロフェッショナルの勉強などもやりました。
そんななかで、焼酎を覚えるため酒蔵を巡ったときにある蔵元で飲ませてもらった樽焼酎、これがとてもおいしかったんです‼こんなふうに樽に寝かせる焼酎もあるんですよ、なんて教えてくれて、飲ませてもらったのですが、ウィスキーよりも少し軽くて口当たりがいい。香りもいいし、とにかくなんて飲みやすいんだろうと思いまして。まさに衝撃的な出会いでした。
まるでワインやウィスキー、ブランデーのように樽で寝かせる、樽焼酎。
―当時、アカツキ商店で樽焼酎の取り扱いはなかったのでしょうか。
郡司 いえ。自分自身がよくわかっていなかっただけで、じつは店頭にはたくさん並んでいました(笑)。例えば関西で割とポピュラーに飲まれている「神の河(かんのこ)」という薩摩焼酎があるのですが、これも樽焼酎です。この「神の河」が火付け役となって、2000年頃にちょっとした樽焼酎ブームが起こったのですが、私は入社する前だったため知りませんでした。
そんな樽焼酎が気になっていたあるとき、琉球焼酎の蔵元から1本1万円の樽焼酎ができました、というご案内が届きました。さっそく試飲させてもらうと、もう本当にびっくりしたというか、やっぱり樽焼酎ってこんなにもおいしいんだと。度数が高い樽出し原酒だったのですが、ウィスキーでもないし焼酎でもないし、ラムのような、テキーラのような、酒好きにはたまらない深みを感じました。そこから樽焼酎に関して本格的に学び始めたんです。2012年、42歳の頃です。
―2022年には世界初の樽焼酎専門サイトまで立ち上げてしまうのですから、ものすごいほれ込みようです。
郡司 とにかく樽焼酎の良さを多くの方に知ってもらうために、自称・樽ソムリエを名乗って、樽コラムから樽焼酎の探し方、おすすめのおつまみ情報などまで幅広く書き綴ってきました。
執筆には、入社後に世界のお酒を調べたりワインソムリエの資格を取るために勉強したことなども、大いに役立っています。ウィスキーやワインは、木の樽で貯蔵して熟成させることで複雑な香りや旨味をかもし出します。同様に、通常は無色透明な焼酎も、あえて木の樽(洋樽)に貯蔵してウィスキー風な樽色を移し、バニラのように濃厚な風味をつけることによって深みのある樽焼酎となるのです。原理は一緒なんだと思いました。
サイトではそんな樽焼酎を詳しく知れる情報を発信しています。オンラインショップもありますので、ぜひのぞいてみてください。
樽焼酎専門サイト「樽物語タルストーリー」
https://taru-monogatari.jp/
―発信してみて手ごたえはいかがでしたか。
郡司 もちろん私一人がおいしいおいしいと発信したところでどうなるものでもありません。でも、「山崎」「響」「余市」など、日本の高級ウィスキーが海外のコンテストで続々と上位入賞を果たし、空前のジャパニーズウィスキーブームが起こって久しいですよね。これに次ぐものとして、もうひとつの日本の蒸留酒「焼酎」が世界中から注目を浴び始めており、なかでも「樽焼酎」にはひときわ注目度の高まりを感じています。既にアメリカに年間数千本単位で輸出している焼酎メーカーもあるほどですから、国内外からの期待値の高さを実感します。国内でも、オンラインショップのリピート率が高いのはダンゼン樽焼酎と聞いています。
―今回ご紹介いただく樽焼酎「THE・RIVER(ザ・リバー)」について教えてください。
郡司 球磨焼酎(WTO・世界貿易機関によって産地指定を受けている世界の銘酒に仲間入りした本格焼酎のひとつ)の深野酒造が輸出する、「深野ウィスキー」という樽焼酎がアメリカにあるのですが、その限定姉妹品が「ザ・リバー」です。樽から汲み出したアルコール度数38度の原酒を割水も色の調整もせずにそのまま瓶詰めすることで、今までの樽焼酎にはなかった濃厚で上品な口当たりを実現しました。「樽物語」オンラインショップで独占販売しているイチ推しアイテムになります。
「深野ウィスキー」は、アメリカのウィスキー専門誌「ウィスキーアドヴォケイト」による年間TOP20ウィスキー2017に、樽焼酎(アメリカではライスウィスキー、コメウィスキーとも)として初めて選ばれるという快挙を成し遂げた逸品。1823年(文政6年)創業の老舗酒蔵が、アメリカのエージェントと組んで年間何千本と売っている大ヒットウィスキーで国内未販売ですから、まさに幻の酒だと思います。
純米焼酎の都、熊本県人吉球磨にある老舗・深野酒造が造り手。
この地のやわらかい伏流水が、まろやかな口当たりを生み出す。
―えっと…。樽焼酎のウィスキー…??
郡司 分かりにくいですよね(笑)。アメリカに輸出すると、樽に入っていて琥珀色をした蒸留酒は全部ウィスキーというカテゴリーなんです。ウィスキーと同じ土俵でお客さまが買ってくれるんですよ。
でも一般的にいうとウィスキーというのは麦芽=モルトでできていて、この焼酎は麹から作られる、そこの違いから、樽焼酎の方が少しまろやかといいますか、米由来の甘さがあるんです。ウィスキーの本場であるアメリカの人たちが、米焼酎を樽で寝かせたものをライスウィスキーと呼んで、これは甘くて飲みやすいウィスキーだと認めてくれた。日本じゃウィスキーと言えないけれど、おいしいからぜひ飲んでいただきたい、そんな気持ちでおすすめしています。
パッケージもおしゃれな「THE・RIVER(ザ・リバー)」。
ウィスキー好きにプレゼントすれば、焼酎を飲むきっかけにしてもらえる味わい。
―でも「ザ・リバー」のラベルにはリキュールと書いてありますね。
郡司 これがまた複雑なんですけど、日本では酒税の関係でウィスキーとの差別化をするために、焼酎は樽の琥珀色を濃くしてはいけないという法律がありまして…。ところが樽で貯蔵して樽色を移すことこそが大事な樽焼酎、美しい琥珀色がゆえに日本では焼酎とは表記しにくく、かといってウィスキーとも書けず、いわゆるジャンル分けでいうと食物繊維を少し加えてリキュールとしているんです。
しかしまあ、なんにしてもアメリカで高い評価を受け、オリエンタルな新しいお酒としてファンを獲得していることに間違いはありませんから、その国内版として「ザ・リバー」に親しんでいただけたら。
ちなみに、樽焼酎の全般的な探し方のキーワードとしては、熟成焼酎と書かれているものが多いかもしれません。それと、もうひとつは色ですかね。琥珀色の熟成焼酎、そのあたりを判断材料として見分けていただければと思います。
ラベルにも明記してあるとおり、酒税法上、色(吸光度)の規制があるため、
酒類としては無味無臭の食物繊維(セルロース)を少量加えてリキュール扱いに。
―おすすめの飲み方を教えていただけますか。
郡司 個人的にはやはりこの樽焼酎の味を本当に分かりたいと思うなら、そのままストレートで飲むのがベストです。でも焼酎とはいえ40度近いアルコール度数ですから、ウィスキーみたいに水やソーダで割ったりするのも全然アリなんです。自分がおいしく飲める濃さや温度っていうのは、その時々で違ったりもしますから、あんまりとらわれすぎるのもね…。寛容でいいと思います。
これからの季節、お湯割りも体が温まっていいですよ。そもそもホットウィスキーにしても、水割りにしても、日本人の発想なんです。一般的な日本人には40度っていうのが少し強めなんですね。日本酒やワインは15度とか、高くても19度くらい、だから基本的には割らずに飲みます。でも季節や体調、好みによって冷やしたり、温めたり…。
飲むのは自分の世界ですから、薄すぎて邪道などということは絶対ないと思います。店頭でも割り方をよく聞かれるのですが、ご自身がおいしいと思う濃さで飲むのがいちばんおいしいんですよ。無理してきついのを飲むことないですよ。そうアドバイスさせてもらうことが多いですね。
味を知ろうとするならまずストレートで、濃厚な旨味を堪能したい。
―「ザ・リバー」に合うおつまみは?
郡司 チョコレート。それもちょっとビターなチョコレートがいいですね。それからアーモンドとか、ナッツ系。ウィスキーに合うものなら基本的には合うと思います。
おすすめのビターチョコにドライフルーツも足して、グラスを傾ける。
おつまみのミックスナッツが進んで、ついつい飲みすぎてしまいそう。
―では最後に、今後の展望をお聞かせください。
郡司 このちょっとジャンル分けが複雑な樽焼酎が、皆さまからきちんと樽焼酎として意識して飲んでいただけるようになる時代がくること、それが一番の希望です。以前、芋焼酎の一大ブームというのがあったんです。それはもう、お客さま同士が奪い合うようにして本格芋焼酎を飲んで、芋のおいしさが全国区的に定着しました。そこまでは難しくても、樽焼酎が一つの流行になって、樽としておいしさが定番化してくれたら…。そう願ってやみません。
―樽ソムリエの沼にどっぷりハマるような、樽愛溢れるインタビューでした。本日は、貴重なお話をありがとうございました!
「THE・RIVER(ザ・リバー)700ml」
アルコール度数:38度
種別:リキュール
熟成年数:10年全量
メーカー:深野酒造
価格:¥6,160(税込)
店名:アカツキ商店 樽物語オンラインショップ
電話:096-338-8056(9:30~20:00)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://taru-monogatari.jp/kome/533/
オンラインショップ:https://taru-monogatari.jp/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
郡司佳明(有限会社アカツキ商店 取締役)
ワインソムリエ、チーズプロフェッショナル、球磨焼酎案内人。
1970年11月24日、宮崎県日南市生まれ。家電メーカー勤務を経て、2001年、有限会社アカツキ商店に入社。樽焼酎「蔵出し原酒」に出会い衝撃を受けたことで樽焼酎について本格的に学び始め、2022年に世界初の樽焼酎専門サイト「樽物語タルストーリー」を立ち上げる。
<文・撮影/亀田由美子 MC/菊地美咲 画像協力/アカツキ商店>