第5回 東洋ナッツ食品株式会社 社長 中島 洋人さん

日本のナッツ加工・販売の先駆け企業
素材の良さを引き出すローストで他社と差別化

 

まだ日本でナッツが一般的な商品ではなかった頃に、日本で初めて加工を始めた東洋ナッツ食品。日本で数少ないナッツ専門企業としてナッツにかける思いを社長の中島洋人さんにうかがいました。

――― 今回、ご紹介いただく商品の特徴やおすすめの点は、どのようなところですか?

中島社長(以下、中島):弊社ではアーモンドフェスティバルというイベントを毎年開催しており、もともとはそこでアーモンド100%のペーストを販売していましたが、流通させてはいませんでした。今後、アーモンド以外のナッツのペーストも発売していくつもりではありますが、その第一弾として、作り始めたのが『パンに塗るアーモンド』です。
『パンに塗るアーモンド』はパンに塗りやすいように硬さを調整しています。さらに素焼きアーモンドをたっぷり使い、甘さを抑えた少し大人っぽいビターなコーヒー風味に仕上げました。

ナッツの加工を日本で最初に手掛けて以来、様々な加工方法を試して、都度、設備に改良を加えています。それが、塗りやすいアーモンドペーストの製造につながりました。アーモンド特有の甘みと香りを最大限に引き出すオリジナル製法の自家焙煎ローストで焼き上げます。このアーモンドをベースにペーストを作っていきます。
日本で流通しているカリフォルニアアーモンドは、ノンパレルという種類が主流です。ですが、市販されているアーモンドパウダーやスライスは、ノンパレル以外にも様々な品種を使うので、食べたとき違和感があることってないですか? その点、このアーモンドペーストは、ノンパレルなので皆さんが食べていちばん馴染みのあるアーモンドの味です。

 

――― 開発した理由は、どのようなことでしたか?

中島:ナッツは酒のおつまみのイメージが強いのですが、おつまみとしてだけではなく、普通の食卓の日常のシーンの中にナッツをもっと登場させたいと思っての提案です。通常のジャムなどと比べて少々お高いものではありますので、忙しい平日の朝というよりは、休日のゆったりした朝や夕食時に食卓の上にあって、贅沢な時間を過ごすときに違和感のないようなものにしようと思いました。

――― 見た目の色が濃いですが、想像よりも油っぽさはありませんね。

中島:アーモンドを意識していただかなくても、「ああ、ナッツだな」と思っていただけると嬉しいですね。日本で販売されているアーモンドは99.9%カルフォニアなのですが、日本の厳しい品質条件をご理解している業者さんや農家さんと取引をしています。高品質のアーモンドなので、余計な油っぽさがないのも特徴です。

――― 貴社が日本ではナッツ加工の先駆けですが、そのきっかけは?

中島:弊社は父が創業しました。戦後、父は神戸で仕事がしたいと考えて、知り合いを頼って神戸で豆の問屋を始めたのです。ところが、頼っていたその社長と常務の乗った船が海難事故で沈んでしまい、2人が亡くなってしまったことで、問屋をあきらめました。その後、会社員になった父は、商社から誘われて東洋ナッツ食品の前身となる仕事を始めました。最初は、ナッツの加工方法がわからないので、取り寄せた英語の文献で学びながら、いくつもの加工方法を試したそうです。弊社は、特別なロースト方法をしておりますが、それは様々な加工方法を試した結果、たどり着いた結果なのです。

――― ナッツを販売する上で起業当初と現在は違いがありますか?

中島:先代が始めた当時のアーモンドの値段は、今の価値でいうと1,000円を超えるような金額でした。日常的に食べるものではなく、ギフトとしていただくような食品だったので、当時は非常に魅力があったのです。しかし、創業から58年たった今ではどこでもナッツは買えます。日本の消費者に認知されるようになりましたが、広まると今度はこの商品が好き、と特別に選ばれることも少なくなります。そんな中でも、多少値段が高くても、素材本来の自然な風味で味の良いものを求めているお客様に認められるようなナッツをお届けすることにおいては、我々の過去の経験と設備が活かせると思っています。

 

――― マーケティングで、工夫されたことはありますか?

 

中島:10年くらい前になりますが、弊社としては冒険的なパッケージデザインの「美実アーモンド」という商品を発売しました。アーモンド商品で、このような形で赤い色のパッケージは無いと思うのですが、女性に好まれそうなデザインにしてみました。

アーモンドは、ビタミンEの含有量が非常に高く、健康と美容に良いということは、我々のなかでは常識ですが、医学的な効果を声高に宣伝できないので、女性への直接的なアピールが難しいのです。

そんな時に、ミス・ユニバースジャパンの栄養指導をされていた栄養士エリカ・アンギャルさんが、華奢な日本人が海外で通用するようなスタイルになるためのアイテムとして、アーモンドを挙げていることを知り、そこから様々なアプローチを考えました。
例えば、発売当時、大阪松竹座の大地真央さん出演舞台にて、舞台上の大地さんからお客様へ商品を配布していただきました。他にも兵庫県でスタートした男子バスケットボールBリーグの前身となる兵庫ストークスというチームのチアダンスにコスチュームを用意して、ハーフタイムショーをしてもらいました。
我々としてもアーモンドをアクティブな女性にもっと食べて欲しいと思っています。アーモンドは単にビタミンEだけではなくミネラルも多いです。油成分もオレイン酸が主流で健康にも良いので、ぜひ手にとっていただきたいですね。

 

――― 他にどのような苦労がありましたか。

中島:私が36歳の時に、父が亡くなって急遽、社長を継ぐことになったのですが、その前に阪神大震災が起きます。弊社が立っているこの土地、全部が液状化して泥の海でしたよ。父は阪神大震災の前年から癌の治療をしていたので、地震のあった1995年はゆっくり養生しようとしていたのですが、それどころではなくて。地震が発生して通信が使えなかったため、東京に出向きホテル住まいをしながら、東京支店から指示を出していました。

父が「とにかく1日も早く工場を動かせ。煙突から煙を出せ」と言ったことを覚えています。震災直後は、今日生きるが大命題ですが、少し落ち着いて生活を取り戻そうとした時に、会社が稼働しているということが、みんなの心の拠り所になる。だから、無理をしてでも動いて1日も早く工場を復旧するようにと。建物も少し傾いている状態だったのですが、震災1週間後には商品を作って出しました。この地域では一番速かったはずです。

震災から1年半後に父は亡くなり、社長就任直後に1番の取引先が倒産して、弊社も倒産しかかったのですが、首の皮一枚繋がって今に至ります。

他社の社長から、後継者への事業の引き継ぎについて相談されることがあります。私が社長になったのは36歳と若かったですが、当時はやるしかないという状態でした。一旦は売上がどーんと落ちたものの、そこから伸びて来たので、若いうちにやらせたほうが失敗しかかっても乗り切れるのではないかと思っています。

 

中島さんのおすすめ

タント・マリーの「ゴルゴンゾーラのチーズケーキ」

http://www.tante-marie.com/
「ワインにとても合います。お酒を飲む方で甘いものが苦手の方もいますが、甘いものが苦手な人も食べられます。しっかりチーズの味がして、少し冷やして食べるとおいしいです。カマンベールチーズのクッキーもおすすめです」

中島洋人さん
兵庫県神戸市出身。
1996年東洋ナッツ食品2代目社長に就任。

東洋ナッツ食品株式会社
http://www.toyonut.co.jp/
1959年創業。
日本で初めてアーモンドの加工を開始。

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